言語学者が選ぶ最強の語学書集(+語学学習法とか研究とか統計とか)

これまで数百冊の語学参考書を買ってきたので、特にお勧めできるものを言語学者の観点からご紹介。 語学書を活用する為の効率的な学習法や言語学の話題も。

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    TOEFLの単語帳といえば神部 孝さんのこの本です。IELTSの対策としても同様に使えるので、単語帳が不足しているIELTS受験者にとっても心強いです。

    TOEFLやIELTSでは大学受験よりもう一段階上の語彙が多く用いられるので、そういったものをおさえるためにもこの単語帳は非常に有益です。

    特にこの本が優れているのは実際に試験に出うる語彙のみを、適切なランクわけで紹介しているところです。おそらくはTOEFL Practice Onlineや公式問題集など全て、オフィシャルな情報を集めて統計的にきちんと取り扱っていると思われますが、見事に試験に実際にでる単語ばかりです。

    また思わぬ効果として日本の大学院受験対策にもなります。東大、京大、一橋、慶應、早稲田、上智などの大学院を受験する場合はたいてい英語の試験がありますが、そこで出る語彙とTOEFLやIELTSの語彙が実によくかぶります。

    IELTSもTOEFLも大学院で学びたい外国人向けの試験という側面がありますし、大学受験よりもう一段階上という意味でもちょうど良いのです。問題製作者はたいてい何か既存のテストを参考にしますが、多くの場合TOEFLやIELTSの問題が日本の大学院受験の問題では参考にされているようです。

    大学院受験の語彙は大学受験より難しいので、英検一級対策の単語帳を使っている受験生を何人も見ましたが、覚えるのも難しく尚且つ大学院の試験では出ない単語がほとんどなので要注意です。英検一級の語彙問題対策本はGREとかぶっているので、TOEFL,IELTS、大学院受験とは出る単語の層が異なります。

    語彙の記憶に時間をかけすぎるよりも、リーディングやリスニングを通して語彙を増やしたほうが時間効率が良い場合が多いのですが、大学院受験の場合語彙力が重要なので、対策としてこの本に重点をおくのもよいでしょう。

    TOEFLやIELTSもやることが多いので、この単語帳の高ランクの語彙を完璧記憶せずとも、時間はそれぞれスピーキングなど他の対策に割いたほうが良いかもしれません。

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    英検1級の語彙問題は難しすぎるといわれることも多いですが、そんな中でお勧めなのがこの一冊です。

    そもそも何故英検1級の語彙問題がそんなに難しいかというとGREという試験に準拠しているからだと思われます。英検1級の語彙問題の語彙はGREの語彙問題と共通のものが非常に多いです。

    GREはアメリカの大学院受験をする人たちのための共通試験で、受験者の大半は英語のネイティヴ話者なので、ネイティヴのための大学院入試試験の国語のようなものです。当然日本人からしたらすさまじく難しい試験で、そこの語彙問題から語彙を選んできていると思われるので、英検1級の語彙問題は当然難しいです。

    よく英検1級の語彙問題の批判として、ネイティブにもわからないような語彙問題を出す意味があるのか、というものがありますが、これらの問題は教養がある人であれば知っているような語彙が多いです。そういった語彙を作文や会話でも使えるようになると英語話者からも知識人?と認めてもらえます。

    この本の語彙を覚えて、その単語を自分の作文のテンプレなどにちりばめることで色々な試験の英作文でも高得点が狙いやすくなります。私はだいたいTOEFLでもライティングは満点近く、GREでも4.5点くらいとる事ができたのですが、それもこういったやり方のおかげだと思っています。

    とにかくこの参考書の語彙さえおさえておけば、ある程度安心して試験を受けられますし、ライティングなどにも活用できると尚良いです。試験は変わっていくものですし、問題作成側もこの本をある程度意識していると思います。統計的な過去のデータに基づいて作られたと思われるこの単語集ですが、もし英検にこの本が通用しなくなった場合はGRE対策の語彙集を覚えると良いかもしれません。

    ちなみにTOEFL,IELTS,TOEIC,日本の大学院受験などでは出ないような単語ばかりなので、あくまで英検1級とGREようの単語集です。



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    伊吹 武彦さんの『フランス語解釈法』は希有な本です。英語関連の本は日本には大量にありますがフランス語関連の本は少ないのが現状です。そんな中でこの本は、英語でもなかなか見られないような、文学者がどのように原著を解釈し日本語訳を書くのかを教えてくれます。

    文学的な内容が中心でフランス語の試験や文法書にはでてこないような表現が多いのが特徴で、わたし達が普段学んでいる外国語というのがいかに体系的で文学から遠く離れたものかを痛感させてくれます。

    アンドレ・ジッドの例文が多く、非常に難解な文章ばかりなので「ジッドは原文で読みたくない…」とかつての私の場合、ジッドを恐れるきっかけにもなりました。もっともそれだけ表現が豊かなぶん原文で読むべきなのですが。

    フランス文学専攻の大学院入試対策としても難しすぎるような内容ですし、この本を読んで活用出来る人は日本には多くはないでしょう。それでも文学者の翻訳技術を詳細に見せてくれるこの『フランス語解釈法』は文学を翻訳する者、特にフランス文学を学ぶ者にとってはこれ以上ないほどに頼れるものです。

    様々な文例が項目別に並べられているので読みやすく、内容は難しいですが出来る限り理解しやすいようにと書かれているのがとても素晴らしいです。

    昨今では文学研究を専門にする人はどんどん減っていて、語学学習をする人もビジネスや実用のためという人が増えています。それでも文学はその言語の行き着く形の一つですし、深くその社会や言語を学ぶ為にこの上なく有効です。

    今後は文学の需要は減り、外国語の文学の難解な文章に取り組む人もますます少なくなっていくでしょうが、人々がこういった難しい挑戦を諦めず、楽な崩壊の道を選択しないと思いたいです。伊吹さんのこういった本が読まれ続ける社会を日本が維持できることを願っています。

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    行方昭夫先生の『英文の読み方』を今回はご紹介したいと思います。

    英文読解の本というと大学受験のためのものが多い中でこの本は、文学者で大学でも指導していた行方先生の本なので少し毛色が違います。

    受験用の英文読解はどうしても構文の構造を探るような読み方になってしまって、全体像、もしくは英語そのものをおぼろげに見ることになりますが、この本を通して見る英文はもっと開けたものです。

    行方先生の言葉で印象的なのは、読めるのに話せないなどという事は無くてそもそもそういう場合読むことも出来ていない場合が多いということです。私自身、言い訳のように読むことは出来るけど話せないと思い込んでいましたが、そもそも読むことも深さが足りなかったことに気づきました。つまり英語力そのものが無いわけです。

    もちろん試験などをうけると読解のスコアが高くてスピーキングのスコアが低いということはよくありますが、あくまで試験での話ですし、実際は読む聴く書く話すというのはそれぞれに強い相互関係があります。なので結局、英語が出来る人になるためには、これらの四技能全てができて当然なのです。

    こういった自分の未熟さを痛感することがあっても、行方先生の言葉はとても紳士的で優しく、多くの英語学習者を励ましてくれます。英語が読める人がどのように英文を読んでいるかを知ることも出来てとても参考になりますし、読みやすい本なので試験対策や反復練習に疲れた学習者の一服の清涼剤となってくれます。

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    英語の巨人、いつでもオープン、人間コンビニエンスストア青谷正妥先生の著書です。TOEFLやIELTSで高得点を狙う方、英検1級を目標としている方にお勧めです。

    青谷先生といえばTOEFL満点ということで有名です。日本で生まれ育った者にとってはすさまじく高い壁なわけですが、その壁を越えるためには普通というものを超越する必要があります。青谷先生の姿勢はとにかく努力努力努力ですが、普通を超越した努力というもののあり方をこの本では知る事ができます。

    多角的に英語学習について語られているのですが、個人的には青谷先生の勉強法方や考え方を知る事ができたのが一番の収穫でした。日本に数人もいないTOEFLiBT満点取得者ですから、そういった人の自論を読めるというのは貴重です。

    見えてこないゴール、睡眠時間を削って学習する中で蓄積された疲れ、出願までの時間制限、などなど色々な苦境の中でTOEFLなどの対策をする人が大半だと思いますが、私自身そういった状況で青谷先生の言葉がどれだけ励みになったか、言葉にできません。

    私の場合はこちらの本だけではなくて、先生のTOEFL説明会にもお伺いしたので、先生の人柄なども少し知る事ができて「おもろい」人やなと思いました。

    名著というのは本自体もちろん面白いですが、不思議とたいていその著者も人間的に魅力がある人たちばかりです。武将に興味をもって歴史に詳しくなるように、語学界の面白い人たちに興味をもってそこから語学の世界を広げていくのも楽しみ方の一つでしょう。


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    予備校界のスター、今井宏さんの文法書です。

    Forestの真面目さや真摯さに一歩引いてしまう学習者や、気軽な気持ちで楽しんで本を読みたいという場合はこちらをお勧めします。特に、文法学習はたいくつでつまらない、という人に最もお勧めしたいです。

    勉強をする上で大切なのは覚えづらい複雑な情報をどのようにまとめて記憶しやすくするかということですが、そういった情報のまとめ方を学ぶこともできます。

    見やすさとわかりやすさを常に意識して書かれていますし、超有名講師になったのは伊達ではないと思わせてくれるほどにすんなりと理解できます。今井さんの話し方や人柄も人に好感を与えるもので、人間的にとても魅力がある方なので実際に今井さんを知っていると更に楽しく勉強できると思います。

    あくまで受験英語、という感じでTOEICやTOEFLなどの試験対策としては、知っているに越した事は無いが絶対必要というわけではない項目も少なくないかもしれません。それでもこういった試験を受けるために文法を軽く復習したい場合は読みやすいのでお勧めです。





     

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    受験戦争を勝ち抜く為の最強の武器としてその名を轟かせる名著、鈴木 陽一さんの『 DUO 3.0 』です。

    英語の重要性と受験参考書の需要から、日本には英語の参考書が星の数ほどありますが、この本はその頂点にあるといっても良いでしょう。

    その大きな特徴はこの一冊で英語力が広く身につくことです。全く無駄が無い例文を通して、重要な文法事項、構文、単語を全てカバーできます。もちろんこの本に出てこないような構文や単語が受験や英語試験ではどんどんでてきますが、この本をやっておけば基礎力は十分です。この本を終えたら後は志望校の過去問や、受ける試験に対応した参考書をやりこめば良いでしょう。

    この本のすごいところは情報の濃密さです。普通の単語帳を20時間読むと、単語力が5レベルあがり他の英語技能のレベルが1程度あがると仮定して、このDuoを20時間こなすと単語力が7レベル上がり、読解力、聴解力、作文力、英会話力それぞれが4レベルほどあがります。なので同じ時間を他の参考書に費やすよりもはるかに効率的です。リスニング力が上がるのは、別売のCDのおかげで、このCDの朗読も恐ろしくレベルが高いです。感情のこめかたが絶妙で、くどすぎず、記憶に強く残る朗読です。

    この本の例文はきちんとネイティヴにチェックしてもらっているので、そのまま覚えて単語を入れ替えれば英作文や英会話でそのまま使えます。さまざまな表現と単語をカバーし、記憶に残りやすいようなストーリー性ももたせ、なおかつネイティヴのチェックもきちんとしているからアウトプットにも使える奇跡のような本です。

    全く無駄の無い参考書界の怪物です。これくらいのレベルの本がそれぞれの外国語で出版されたら、日本という国が変わるでしょう。

    CDは基礎用と復習用がありますが、基本的には復習用がお勧めです。基礎用は再生速度の遅さや日本語訳が時間のロスに繋がります。

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