理系研究者にとって生涯ずっと重要なのが助成金です。分野によってはちょっとした額かもしれませんが、大金が動くプロジェクトも多数あり、そういった場合は助成金が不可欠です。

言語学の場合は、もちろんどんなトピックかにもよりますが、大体旅費とデータをとるための実験や調査に参加した参加者への謝礼を申請することになり、30万円から100万円もあればジャーナルに掲載してもらう論文一本分がなんとかなります。

切り詰めればもっと安くすませられなくもないので、切り詰めて自費、もしくは所属している大学からの研究費でなんとかしてください、という感じかもしれませんが、助成金は単なる研究費としてだけではなく、研究者の能力を示す指標としても重要で、様々なことに影響してきます。

助成金をもらえばもらうほど研究者としての立場が良くなっていくので、履歴書にこれまで得た助成を書くのは必須ですし、ホームページに自分がこれまでに得てきた助成金の金額を細かく書く研究者もいます(やりすぎかも知れませんが)。助成金をもらう→助成金をもらっているので少し良いジャーナルに掲載されやすくなる→良いジャーナルに掲載されているので次の助成金をもらえる額や可能性が増える、といった魅力的なループがあります。

そんなこんなで重要な助成金ですが、応募するにあたって、隠されたルールというものがたくさんあります。そのルールから外れていれば助成金を得られる可能性は低くなります。

この本ではそのルールやどういった基準で助成の対象が決められるかを事細かに説明しています。また、実際に助成を得たプロジェクトの内容や、そのプロジェクトが応募の際に用いた要約なども見れます。

助成金を得るために書く書類の数はとても多いですし、誤字脱字などは絶対にあってはいけません。入念に、わかりやすく、客観的にある程度のページ数を書くので非常に骨が折れる仕事です。こちらの本では助成の申請のために二ヶ月弱は時間をかけて準備しろと書いています。

それだけの時間をかけても結局何も得られない可能性が高いので(助成金の倍率に関する情報まで書かれています)、時間を無駄にしないためにもベストを尽くし、より良いものにすべきです。

応募書類を自分でチェックするのはもちろん重要ですが、他にも何人かにチェックをお願いするべきです。その際どういった人が適任か、どういったチェック項目が必要かということまで書かれています。

こういった生きた情報というのは、助成金に関して、これまで無かったですし革新的な本だと思います。もちろん重要なのは研究内容ですが、せっかく研究内容が良くても、応募書類の不備で助成金を逃す可能性は低くないので、こういった本で十分準備をするのがベストです。運や政治的なコネなども結果に絡みますが、そんなことまでこの本には書かれています。

内容はもちろん英語圏の助成金の審査が中心なのですが、日本でもそのプロセスはそこまで変わらないはずですし、日本国内の助成金の申請にも役立ちます。

私も今現在、助成のための応募書類を書いているので、ベストをつくして今年一つはなにか助成が得られたらと思います。