言語学者が選ぶ最強の語学書集(+語学学習法とか研究とか統計とか)

これまで数百冊の語学参考書を買ってきたので、特にお勧めできるものを言語学者の観点からご紹介。 語学書を活用する為の効率的な学習法や言語学の話題も。

    2015年11月

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    今回は東京外国語大学言語モジュールのご紹介です。

    ネット上であったらいいのにな、と思うサービスとして、分からない母音や子音をクリックしたら音が再生されるものを求めていました。本で勉強している場合は、付録のCDを聴こうというは面倒くさかったり、聞きたい音一音だけ聴いたりするのは難しく一つ一つの子音や母音をきちんと把握できません。

    そこでとても有効なサイトがこの東京外大の言語モジュールです。これで無料というのがすごいですね。ものすごく充実していて、しかも多くの外国語と日本語の情報があります。

    ここで特にお勧めなのはIPAの子音のところで、主要な子音のほとんどを生の声で聴けて確認できます。自分が学んでいる外国語の子音がIPAでどう表記されるかを、参考書やwikipediaなどで確認して、その音をこちらで聴いて練習しましょう。

    このIPAのセクションの発音はとても綺麗で、色々な配慮がなされた録音である事がわかります。誰の声かは存じませんが、きちんとした言語学者の方でしょう。

    個人的によく参考にしているのが日本語とロシア語の発音のところで、日本語のアクセントのパターンや特徴など勉強になりますし、わかりやすくまとめられています。日本語を専門的に学ぶ留学生たちにも見てほしいです。

    特に充実しているのはこのモジュールでは発音関係ですがいくつか理由があると思います。

    まずはインターネットのブラウザ上で勉強する場合、クリックして音がでるというのが大きな利点なので、それも理由の一つでしょう。

    あとは言語学者と外国語学習者の間に微妙な壁があり、その壁が発音の学習環境の発展を妨げているからです。少なからず言語学者は世間の参考書とは違うかたちで、研究の成果を活かしやすい発音教育に力を入れたいと思っているでしょう。

    音声学や音韻論を学んだ人たちから見ると、参考書などの発音に関する説明は、わかりやすい説明ではあるものの、正確ではなく、ネイティヴには伝わらない可能性があると思えることが少なくありません。

    もちろん参考書の説明は間違っていません。紙面のスペースの都合や、発音にあまり時間をかけると学習者が飽きてやめてしまう可能性があること、などなど色々理由があると思います。

    それでも発音は一度クセがついてしまうと、矯正するのが難しいので、最初から強い志をもっている学習者はまず発音をきちんと学ぶと最終的には近道になります。

    語学の学習に行き詰ったと感じた場合は、息抜きもかねて別の視点から、こういったモジュールや発音関連の本、言語学の本などを通して学習自体を見つめなおしてみるのも良いでしょう。

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    英語にはTOEICやTOEFLなど、英語力を証明する試験がありますが、他の外国語ではそうもいきません。そもそも国や地域に認められた試験が無い言葉もたくさんあります。

    トルコ語の試験にはtelcやUTSという試験がありますが、これらの試験はなかなか受けられる機会がありません。

    今はイギリスに住んでいるので、そのせいかもしれないのですが、これらの試験を受験できる環境はありません。また試験について双方に問い合わせても連絡が返ってこないので現状とても謎に満ちた試験です。もちろんメールは相性が悪いと迷惑メールフォルダにすら入らないですし、外国語で送られると特にそうなるので、連絡はいただいているのかもしれませんが。

    最近はどのヨーロッパの言葉も実力を証明する試験が大体はあるのですが、このようにあるような無いようなという言葉もあり、全く試験が無い言葉も特にアフリカ圏などにあります。

    とは言っても試験が示せる能力は限りがあって、TOEICが満点でも会話や作文は苦手な人もいますし、TOEFLでライティングは満点がとれても英語で論文は全然書けないということもあります。後者は私です。それに異なった試験間の点数の換算も適切なものは無いので、仮に換算して人に自分の実力を伝えられると思えても、換算が不適当な場合がほとんどです。

    私のTOEICのスコアは~です、と伝えてもTOEICは受けずにIELTSしか受けていない人にはなかなか伝わりません。そもそも試験の内容が違い、一方は文法問題があり、もう一方には文法問題は無くても筆記とスピーキングがある時点で比較できません。結局同じ試験を受けた人同士でしか点数の価値はわからないのですが、IELTSのように運次第でスコアが大きくぶれる試験は同じ試験を受けている人同士でもなかなか実力を比べられません。安くて何度も受けられるのなら、運の要素も何とか除外できるのですが。

    TOEFLも高得点者ほど運に左右される傾向にあります。理由は単純で4択が主なリーディングとリスニングで、あるていど上級者ならば明らかに違う選択肢を除外できるからです。そういった場合の正解率が勘に頼っても50%くらいで、そういった勘に頼らざるを得ない選択肢がリーディングとリスニングに2問ずつあったとしたら、運次第で4点点数が変わります。ライティングやスピーキングでもリスニングを聴いてから答える問題の場合、必要な箇所を聞き取れたか聞き取れなかったかで点数が変わってしまいます。これらを踏まえると上級者の場合6点くらいは点数がばらけても不思議ではありません。

    大切なのは、語学試験が示すスコアや結果というのは、ある程度、漠然と実力を示しているのに過ぎないと認識しておくことです。

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    古い本ですが、改訂を重ね、今なお多くの言語学者に読まれる一冊です。

    基礎的な内容で、大学生で言語学を専攻している学生さんなどに特にお勧めですが、外国語を学ぶ全ての人々にお勧めの一冊です。特に言葉の音の発生原理や知覚について興味があれば楽しんで読めます。

    子音の発音は子音のメカニズム、どのように肺からの空気を遮るのか、さえ分かればすぐにネイティヴ並みの発音になるので、この項目を読んで、今現在学んでいる外国語の子音をIPAでなんと表記するか参考書などで調べ、そのIPAの発音をウィキペディアなどで確認するのをお勧めします。

    母音は舌の位置で基本的には変わる、ということもおさえておくと良いです。また、フォルマントの知識をここで身に付けておくと、praatなどで自分の発音した母音をネイティヴの母音と視覚的に比べられます。耳で聞いて比べるのは非常に感覚的ですが、視覚的な比較は理論的な分析になります。分析してネイティヴと母音が異なれば、母音は基本的には舌の位置が全てなので、舌の位置を調節しましょう。

    また、訳がとても素晴らしく、廣瀬肇先生が訳されています。先生のすごさを言葉で表しても陳腐になってしまうのですが、とにかく訳を見るだけで先生の造詣の深さがうかがえると思います。

    私自身今後も外国語の試験、おそらくはロシア語のものを受けますし、そのための対策も毎日しています。そういったところで成果を出すことで、言語学的な知識の有効性示していきたいです。ただでさえ忙しいのだから、言語学の本を読む時間は無い、と思われる人も多いでしょうし、それが間違いということも絶対にないのですが、個人的には回り道に見えてもある程度言語学を学ぶのは外国語学習に有効だと考えています。



    ↓のリンクは最新版のものですが、古い版も名著ですし中古でよりやすいので、予算をおさえたい場合はそちらで。

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    リスニング対策が必要な人だけではなく、全ての受験者に必須とも言える内容です。

    私個人の効率的学習法というのは読解対策をしないというものです。これはあらゆる試験で共通している学習法です。

    仕組みは単純で、リスニングの対策をしていたら読めるようになるからです。それに読解スピードも上がります。逆にリーディングの対策をしていても聴けるようにはなりません。

    ただしTOEICのリーディングの場合は空白穴埋め問題の文法問題に慣れが必要で、リスニング対策だけで出来るようにはならないのできちんと対策が必要です。それでもリスニングをきちんとやっておけば読解問題の対策の時間が浮きます。

    公式の問題集でETSの本だというのも重要で、実際に試験に出る可能がある単語、構文、表現のみです。問題集作成は非常に難しく、どれだけ努力しても公式と比べると1ランク下がってしまい、朗読のスピード、使う単語、などなど色々な箇所に小さな違いがあります。出ない単語を覚えても、英語力はあがるとしても、試験対策としてはベストととは言えません。効率重視で試験対策をしなければ、特に働いたり他の勉強をしている場合、スコアがなかなか上がりません。

    それとCDが3枚もあるのが特に良いですね。試験対策で重要なのは、知らない単語、知らない表現が出てこなくなるまで大量に聴き、そしてそれを繰り返すことです。このCD3枚と、他に5~7枚程度良い問題集から集めてすべてを何度もシャドーイングすれば、どんどんスコアはあがるでしょう。


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    中国人の友人や中国語が出来る知り合いがいて、知りたい情報がこれらの試験にある場合は是非インターネット上で、中国語で調べてもらいましょう。自分でgoogle translateとyahoo chinaを組み合わせて調べても、見つかる情報があるでしょう。

    GREやGMATは日本では情報がとにかく少ない試験で、しかも見つかったとしても悲しいことにアフィリエイト目的の誤った情報ばかりが見つかります。また本もこれらの試験をきちんと、今の状況も含めて把握して、対策を書けているとは言えません。とにかく難しい試験ですし、出版社ですらなかなか対応できていないのだと思います。

    そんな中で、中国は人口も日本の10倍なので情報がただ単純に10倍はありますし、ネット上で文字を書く人が日本よりも多いように感じます。もちろん英語で最初に検索するべきで、それでも見つからない情報などを中国で探すべきでしょう。

    TOEICも中国では人気なので、面白い情報があったりします。また、中国ではキャリアアップのため、将来の就職のために英語圏に留学する学生が多いのでTOEFLやIELTSの情報も相当なものです。

    これらの試験の極秘情報、裏技、なんてものもあるかもしれませんが、試験違反のテクニックなどには気をつけましょう。試験で何か違反行為をすればペナルティがありますし、倫理的にも避けるべきです。


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    英語は日本語と共通の母音や子音が比較的少なく、独特のリズムやアクセントのパターンをもっているので、特に発音が難しい言葉です。

    こちらで紹介している発音関連の本のなかでも「日本語音声学入門」やPronunciation Dictionaryは特におすすめなのですが、これらとあわせて使用すると有益なのがこの「超低速メソッド英語発音トレーニング」です。

    書かれている文章ももちろん役立つのですが、特に個人的に好きなのは音声ファイルです。ゆっくり発音を確認でき、音を把握しやすくなります。こちらで説明したように、ヘッドフォン必須です、スピーカーでは聞かないほうが学習には良いです。さらに自分の発音を録音して、それをネイティヴのお手本と聞き比べるのも重要です。

    こういったゆっくりとしたネイティヴの発音というのはネット上でもなかなか手に入らない貴重なものです。さらにこれを視覚的に見ることで自分の発音が正しいのかを感覚ではなく、理論的に正確に確認できます。このゆっくりとした発音が、視覚的な確認にも有益です。

    視覚的に見るというのはどういうことかと言うと、音声解析ソフトでフォルマントを確認します。そのソフトとしてお勧めなのがpraatです。言語学者が音声解析をする場合はたいていこのソフトです。フリーですし、性能は十分です。

    ただし使いづらいので別エントリーに使い方を簡単に説明しておきます。

    頻繁に視覚で確認するのも面倒かもしれないので、この本の指示に従った練習を繰り返し、自分の耳で鍛えて、その成果を視覚でチェックしましょう。

    とにかく発音矯正は語学学習の根幹、リスニングに直接役立ち、スピーキングやライティングも間接的に改善します。


     

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    英語圏で発売されているロシア語辞書のご案内です。

    英語が出来るロシア語学習者は使える辞書だと思いますが、一番の魅力は値段です。今の中古の値段は800円ほどです。これは日本で発売されている辞書と比べて非常に安く、それでいてきちんと実用に耐えうるものです。語数は少ないですし例文が無いので、真剣にロシア語を上級までやるというのであればやはり日本のきちんとした辞書を買うべきでしょうが。

    名詞の性やアクセントの位置が書かれていることも非常に重要です。発音記号はありませんが、例外を除いて、ロシア語はアクセントの位置さえ分かれば発音がわかるので、なんとかなります。

    安いものが欲しいのならば無料オンライン辞書で良いのでは、と思われるかもしれませんがオンライン辞書で実用的なものはありません。オンライン辞書にはアクセントの位地や名詞の性が書かれていないからです。

    英語で他に良い辞書というと"Oxford Russian Dictionary: Russian-English / English-Russian"がありますがこちらはより割高になります。そして上級者には語彙数が少なく物足りないかもしれません。

    残念ながら上級者むけの、例文もあり、発音についても配慮されていて、語彙数が豊富な辞書というのは英語では無さそうです。

    外国語の研究が進むのは、経済的に重要な場合とあとは戦争です。皮肉なことにアメリカとロシアは両方の語学研究発展要素を満たしていたわけですが、意外なことに辞書が充実していません。その一方で文法書は上級者向けのものがあります。日本では上級者向けの文法書はなかなか無いのですが、世界的に見て日本のロシア語学習環境はとても恵まれているようです。

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