言語学者が選ぶ最強の語学書集(+語学学習法とか研究とか統計とか)

これまで数百冊の語学参考書を買ってきたので、特にお勧めできるものを言語学者の観点からご紹介。 語学書を活用する為の効率的な学習法や言語学の話題も。

    2016年02月

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    日本人にとって発音が簡単な言語と難しい言語があり、おそらく簡単な部類なのはスペイン語やイタリア語ですが、逆に難しいものの代表は、個人的には英語だと思っています。もちろんヨルバ語や特殊な子音を使うアフリカの言語も難しいでしょうが。

    英語の難しいところはまずストレスアクセントがあること、そしてそのストレスアクセントの有無に応じて母音の発音が変わり、日本語には存在しないシュワー、あいまい音があることです。

    日本語とはこのように大きく異なり、尚且つ複雑な発音体系の英語はそういった意味で難しいのですが、ロシア語も全く同様の理由で難しいのです。

    発音の難しさから発音に特化した本が必要なのですが、英語以外の外国語ではそういった本が無いこともよくあります。そんな中で幸運にもロシア語では発音に関する名著があり、それが今回ご紹介の「ロシア語音声概説」です。

    I章とII章は人の声、母音子音などに関するもので、IPAの知識があるような人であればすらすらと読めると思います。

    III章からロシア語の発音になります。ここからは何度も繰り返し練習して、読み返して、ロシア語の発音を体得する努力をしていく単元です。書かれた説明どおりにやっていけば自然に発音が改善されていくでしょう。

    この本は他の発音関連の本よりも興味深い点が多々あり、その一つが第VI章の「日本語話者が注意すべき音連続」です。

    母国語がどうしても外国語の発音を邪魔してしまうのですが、そういった事にまで言及する本はとても少ないです。この章からもわかるように、それでも、この「ロシア語音声概説」は日本人を対象に書かれているということが、ただ日本語で書かれているからという理由だけではないことがわかります。

    例えばчитатьと読むときに、最初のиの母音を知らないうちに発音せずに子音のчの音しか発音しない傾向が日本人にはあります。実際私もそうでした。母音や子音をきちんと発音しようとすることに意識する人はまだいるでしょうが、ここまで意識する人はなかなかいませんし、ここまで意識を向けた本はほとんど存在しません。

    またアクセントにも多くのページ数が割かれていて、これも個人的には非常に関心したことです。ロシア語は先述の通り、アクセントの位置、有無によって母音の発音が変わるので、アクセントの理解というのは発音の改善に必須事項です。

    ロシア語の場合は格変化や名詞か形容詞かによって同じ語でもアクセントの位置がしょっちゅう変わるので、アクセントをきちんと把握して発音することは至極難しいです。それでもこちらの本では出来る限り体系的に、覚えやすく、理解しやすく説明されていて、アクセントの位置を推測できるようになってきます。

    最後に、なんとこの本ではイントネーションまで細かく解説しています。イントネーションも意図を伝える重要な情報で、ニュアンスや感情表現に大きく貢献します。また言語によって異なるので、意識しなければどうしても不自然なイントネーションになってしまいます。

    個人的にはリズム(シラブルの長さ、アクセント有無でシラブルの長さが変わるか、アクセント間のリズムが一定かどうか)、イントネーション、母音、子音、これらを全てきちんと意識して勉強することで初めてネイティヴに近い発音が出来るようになると思っています。もしくは母国語を忘れてその外国語を第一言語にしてしまうしかありません。

    英語でもこれほどの本はなかなかありませんし、日本人向けに綺麗にデザインされたこの本は間違いなく名著です。
    英語では"Introduction to Russian Phonology and Word Structure" "The Phonetics of Russian"などが発売されています。


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    oldfrench

    古フランス語を学びたいという人はとても少ないと思いますが、参考書がほとんどありません。日本語でも何冊か出版されていましたが絶版のものが多く、再版されたものも少し読みづらい傾向にあります。

     

    そこで頼りになるのはやはりフランス語で書かれた古フランス語の参考書です。

     

    古フランス語といっても地方や年代によってだいぶ異なりますし全てはカバーできないのですが、変化の規則性のようなものを把握しておくとある程度推測で読めるようになります。規則性については日本語の「古フランス語」のWikipediaでの項目や、そのフランス語版、英語版の古フランス語の項目が役に立ちます。

     

    現代のフランス語に訳された古フランス語の文学などを比較しながら読み進めるのも良い手段でしょう。意外なほどに、日本の古文よりも、参考になる本が少ないのです。


    デカルトくらいの時代になってくると現在のフランス語の知識で読めるようになってきますが、デカルトより一世紀以上前の本に関しては大変かもしれません。

     

    古フランス語を勉強したいというのも、例えば本郷の大学院受験、ラブレーが面白いから、などなど色々な動機があると思います。今の日本には古フランス語をすらすらと読める人というのはほとんどいないので、読めるようになれば誰にも見えない景色を見られる可能性もあります。日本人として生活していて、もしくは日本語を理解していて古フランス語を理解しているからこそ到達できる境地があるでしょう。今はもう諦めていますが私がいつか挑戦したいことの一つです。

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