言語学者が選ぶ最強の語学書集(+語学学習法とか研究とか統計とか)

これまで数百冊の語学参考書を買ってきたので、特にお勧めできるものを言語学者の観点からご紹介。 語学書を活用する為の効率的な学習法や言語学の話題も。

    2016年03月

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    語学書のブログでなんで統計学やねん、という話かもしれませんが、かなり多くの言語学者は統計に基づいて自論を展開していくので、言語学との関わりがとても強いです。

    言語学だけではなく、科学と呼べる要素がある分野全般、研究者が書く論文には分野を問わずしょっちゅう統計的な考察がなされています。

    この本はそういった論文の統計的な考察を理解する手助けになるようなことはあまり書かれていませんが、統計学というものが何を行うものなのかという根本的なことが書かれています。論文を読んでいたり、もしくは書いていて統計という壁にぶつかることが多いと思いますが、そういった場合は自分の分野のための統計学関連の本が役立ちます(Research Methods and Statistics in Psychologyなど)。

    この本の一番の長所だと思うのはわかりやすい具体例とともに統計学を説明しているところです。身長のデータなど、身近でわかりやすいデータをもとに統計を説明していて、実際に統計処理がどのようにデータ上で働くかが理解しやすくなっています。

    また同様に、この本の好きなところは統計学という学問が何をしようとしているのか書かれているところです。まさしく統計学入門という題にふさわしく、専門的に統計学を学ぼうという方々が進む道を示しているとも言えます。

    一つ一つの言葉がわかりやすく説明しようという意志を反映していて、著者の小島先生がいかに熱心にこの入門書を書いたかが伺えます。小島先生がご自信の体験も書かれていますが、統計学関連の本はなかなか頭に入ってくるようなものがなく、多くの統計学関連の本は読んだあともなんだか結局よくわからなかったという気分にさせるようなものです。これはもちろん私自身の知識不足と経験不足からくるものですが、そういった中でもこの「完全独習 統計学入門」は特別でした。

    ただし、あくまで入門用の本で、この本を読んだからといって、論文などで統計的な分析ができるようになったり、論文の統計に関する記述が理解できるようにはなりません。もっと踏み込んだ内容については別の本を買うかネット上で情報をあつめたほうが良いです。

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    学会発表でポスターを作製することになって、はてさてどうしたもんだろうと思う人も多いでしょう。

    口頭発表もそうですが、パワーポイントなどのソフトがどんどんバージョンアップしてデザインや様々なオプションも進化しています。つまり定型といったものがどんどん変わってきているので、本やネットを通して今のスタンダードが何かを知る必要があります。

    この本はそう考えると少し古いのですが、もっと根本的な、心構えや書かれるべき内容などが記載されているので時代を超えていつまでも参考にできるという点で名著といえるでしょう。

    プレゼンテーションはおそらく日本人の多くの方が苦手とする分野ですが、その苦手分野をスポ根で励ましてくれるこの本は多くの研究者を奮い立たせてくれます。

    パワーポイントなどでの発表方法についての情報はいろいろなところにあると思いますが、ポスターは少ないでしょう。

    私自信ポスターをどう作るべきか色々と悩んだので、メモついでにこちらに記載しておきます。

    基本的にはパワーポイントで作成。学会のフォーマットに合わせたサイズにする必要があるが、基本的にはA1,もしくはA0。A1の大きさがどれくらいかあらかじめ把握しておいたほうがいいので、自分の手持ちのA4用紙を8枚ならべてA1サイズを作ってみる(A0ならさらにその倍の16枚)。分割印刷できるプリンタや、分割印刷補助ソフトを使えば、ためしに作ったファイルをA4複数枚で印刷可能。最後の印刷前になるべくこういった手段で印刷して、実際のポスターサイズで見やすいファイルになったか確認。

    フォントは一番小さくても24、できれば28くらいで、Arial unicode MSやゴシックフォントなどをなるべく使う。ただし字数を稼ぎたい、たくさん書きたい、という場合はTimes New Romanが狭い範囲にたくさん書ける(見づらくないか検討しつつ)。

    イントロ、メソッド、結果、議論+結論を書いて最後に参考文献一覧と謝辞。

    参考文献一覧と謝辞はスペースがどうしても無い場合は削除するのもあり、だけれどもなるべく削除しないように。削除したいくらいのときは22くらいの小さめのフォントサイズにここだけしてしまうのも可。

    ポスターでの発表の場合は貼る場所がとても重要。大きい部屋だとしたら、一番奥の尚且つ外側はあまり人が来ない。スーパーマーケットのような感じである程度人の流れ方が決まっているので、どこに一番人が来るかを考えてなるべくそこに貼る。

    ポスターのプレゼンでだいたい最初に聞かれるのは、簡潔に言うとどういう内容?というものなので、あらかじめ簡潔に説明する原稿みたいなものを用意しておいてまるおぼえしておくと楽。

    内容をとにかく簡潔に、分かりやすく、チラっと見ただけでもわかるように書く。無駄な情報は省く。欲張って報告できることを全て報告しようとしない、重要なものだけ3つ程度。

    連絡先を書くのを忘れずに、それと持ち帰ってもらうようの印刷を20部くらい作っておく。ポスターやプレゼンは自分の研究を宣伝して、売り出すところ。

    英語での質疑応答で伝わらなかったり、ぎこちないとそれはそれで問題なので、英語で予測される質問のリストをなるべく多く作っておいて、それに対する返答の練習もしておく。なるべく簡潔に、そして明確に。できればそういった質問リストにたいする返答も録画して、聞き取りづらい英語になっていないか、わかりやすい内容かチェック。

    こんなところでしょうか。ネット上でも良い例悪い例、色々と見られるのでぜひともチェックしたいですね。こちらの本にも書かれていますが、発表の前は発表練習をします。やり方としてはパソコンのカメラを使っての録画です。そこまで良いマイクがついていないので、声はあまり綺麗に録音できませんが、そのマイク越しでも明快に聞こえるようなハキハキした話し方がベストです。音声だけではなくて、映像も録画するのは挙動をチェックするためです。意外と変なクセがあったりして、例えば私の場合は立ちながら発表していると左右にふらふら動いてしまうことが多く、パソコンのモニターばかり見て聴衆に目を向けない傾向があります。こういったことをチェックするためにも録画がおすすめです。

    こういったことはこの本にも書かれていて、全てをきちんとこなせている研究者は小数ですし、必ずしも正しいといえる答えがないのも研究発表ですが、意識すればいずれ改善されていくでしょう。本当にすごいプレゼン力をもっている研究者もいるので、この本を超えたプレゼンをその後は目指していくと良いでしょうし私も目指しています。


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    英語はアクセントに発音が支配されているといっても過言ではなく、アクセントをネイティヴと同様に発音できるかどうかで伝わりやすさが変わります。アクセントがある箇所は母音の発音が無い箇所とは異なりますし、アクセントの強度のありかたも英語と日本語で異なります。

    かなり意見が分かれることで、未だにこれだという答えが無い難しい話題ですが、単純にいうと日本語のアクセントは高く発音され、英語のアクセントは強く、長く、母音が無アクセントのシラブルとは違ったものになります。細かく言っていくと、例外も多いですし、日本語のアクセントを私たち母語話者は強く感じる傾向にありますし、この変に関してはとても難しいです。

    こういった難しいことに挑戦し続けたのが杉藤先生です。杉藤 美代子先生は精力的に研究をされた方で、疑問があればそれを証明するための実験を行い、どういった結果が得られたかをわかりやすく報告されています。

    色々な人がネイティヴのように、ペラペラな英語を習得したいと思うでしょうが、そのペラペラというものは実に複雑です。単語の使い方も自然である必要がありますし、冠詞といった日本人にはとても難しい問題があります。仮に原稿を英語で音読するとして、その発音だけに関してもペラペラになるには色々と乗り越えるべき壁があり、その一つがアクセントです。

    母音や子音に関しては本が多くあり、尚且つそれらの研究は完成されていてただ覚えればいいだけです。一方でアクセントについて書かれた本は少ないですし、研究者の間でも実際に強さやピッチの高さはどうなのかいまでも意見がわかれますし、それが物理的なものか心理的なものかもまだきちんと証明されていません。そういったなかでこういった本が出版されたというのは大きな一歩ですし、色々な方に読んで欲しいと思います。

    研究論文のような文体に感じられるかもしれませんが、読みやすいほうなので、おそらくは言語学の知識が無い方でも読めるはずです。



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    昔流行った睡眠学習ですが、最近は関連グッズも発売されていませんし、書籍もここ数十年発売されていません。

    流行ったものの効果が無いということで見向きもされなくなりましたが、今でも睡眠学習についての研究は行われているようです。

    杉村太郎さんの英語学習本に影響されて、夜寝る際はmp3プレイヤーをヘッドフォンで聞きながら寝ていたのですが夢の中で変なザーザーとした雑音がうるさくなり、なんだろうと思いそのまま起きたら、それがmp3プレイヤーで聞いていた英語音声だったことがわかりました。眠りが浅い、起きる前の状態ですらただのノイズにしか聞こえず、声とすら認識しなかったので、この時に睡眠学習に懐疑的になりました。

    ただ、寝ている間に聞いても効果は無いのですが、私は寝入るまである程度時間がかかるのでその間無駄にならないという意味でやる価値があるように思えました。

    眠りに落ちる前というのは考え事をしていましたが、論文などの良いアイデアが思いつくことも無く、あまり有意義ではありませんでした。アイデアを思いつくことがあるのですが、冷静になると大して良いものではなく、起きていてきちんと資料をみながら考えている時のほうがきちんとした着想を得られます。

    そんなこんなで睡眠(に入る前)学習を改善しようと色々して得た結論は、まず音量をきちんと調節することです。ヘッドフォンも使わずスピーカーから聞いて、なおかつ耳をすませばきちんと聞き取れる程度の音量が睡眠の質を下げずベストでした。

    それと何を聞くかが大切で、一番よかったのはその日にシャドーイング、もしくは学習用に黙読したテキストです。記憶が新しいので、小さい音量でも聞き取れますし復習になります。


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    世間では経歴詐称で騒がれているショーンKさんですが、英語力はどうなんだろうと疑問に思う方も多いと思います。顔を整形したり経歴を詐称しても英語力はそう簡単にごまかせませんから。

    私は発音が専門なので発音に着目すると、驚くほど良い発音だと言えます。この発音を習得するには何年も、ほぼ毎日何時間も練習しなければいけないはずですし、彼が血のにじむような努力をしていたことがわかります。私もシャドーイングをしすぎて声がでなくなった時期がありますが、この人の場合は本当に喉から血がでるほど練習したのではないでしょうか。大学1年生のときから英語圏で暮らして10年近く現地人とコミュニケーションを続けて、尚且つ彼女や奥さんがネイティヴ、そしてもちろん英語をほぼ毎日勉強、なんて生活でこれくらいの発音になるかどうかという感じでしょう。留学経験が無いのならすごいことです。

    ポイントとしてはシュワーの発音や、アクセントです。日本語にはシュワーといったものがありませんし、この「あいまいに発音される母音」はなかなか習得できないのですが、ショーンKさんのシュワーはネイティヴ的なものです。

    母音に関して言うと、例えば同じaでも強く発音される場合と弱く発音される場合では発音が違います。強く発音されるなら「ェア」や「エィ」という感じになって、弱く発音されるならばアとオの中間のような、どっちつかずの母音になることが多いです。ショーンKさんはきちんとこういった使い分けもできています。

    praatなどのソフトで母音を解析して、ネイティヴと日本人の、そしてショーンKさんの母音のフォルマントを比較すればその発音力は一目瞭然でしょう。

    日本人は前置詞や冠詞といった無アクセントの単語も他の単語と同じような音量で発音してしまいます。本来こういった、無アクセント語は速く発音され、尚且つ弱くなくてはいけません。このへんもきちんとしていて、英語特有のリズムを獲得しています。ハーフであれば子供の頃から英語をつかうので、出来ても不自然ではないですが、純粋な日本人でこれは逆にすごいです。特に男性の筋肉は母国語以外の言葉の発音に対応しづらいので、男性でここまでの発音をするのはとても難しいことです。

    きちんとソフトを使って解析したわけではありませんが、上記の点に注目して少し聞いてみると日本人離れした発音だと言えます。

    映画「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」のモデルになったフランク・アバグネイルさんも同様に経歴詐称を繰り返し、それでもちゃっかりと司法試験をパスしていますから、似たようなものかもしれません。フランク・アバグネイルさんは実際はそこまで経歴詐称をしていなかったようで、皮肉にもそれがむしろドラマ性を下げていますがショーンKさんは実際に十分詐称していたのでドラマ性で言えばアバグネイルさん以上かもしれません。

    朗読用の英語原稿はネイティヴ書いていたり、英語力にも詐称がある可能性も十分ありますが、賞賛に値する英語発音力です。いかに努力して発音を改善したかを綴った本が出版されたら是非読んでみたいです。


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    今回は異色ですが、語学書のカテゴリで販売されているのでこちらの漢字ドリルのご紹介です。

    タイトルが「脳を鍛える大人の漢字ドリル」ということでボカされていますが、ボケ防止に有効な本で、きちんと効果がある名著です。算数ドリルなども書いている川島隆太教授ですが、多くの成果をあげています。高齢者の認知能力や記憶力を実際に改善しているという報告も多く、実際祖母に買ったところ効果がありました。

    祖母はもう99歳、元気とはいっても記憶力や認知力がどうしても衰えます。同居していないので年に数回祖母のもとを訪れたり、電話していたのですが、そういったちょっとした交流ではその衰えに気づきませんでした。きちんと色々なことを覚えていて、受け答えもしっかりしていた、ように思えていたのです。

    ところが知らないうちに祖母の口座から一千万円ほど抜かれていて、詐欺かなにかにあったことがわかりました。その時になって初めて、祖母の記憶がひどく希薄で混濁していて、誰かにお金をあげたのか、暗証番号を誰にいつ教えたのか、通帳や印鑑をわたしたのか、委任状を書いたのか、などなど色々な事が本人もよくわからないということに気づきました。

    何らかの詐欺にあったのか、盗まれたのか、何ともいえないですが祖母の記憶力がそこまで衰えていてつけ込むスキがあったことに気づいていなかった自分たち家族にも責任があり、考えを改めました。

    脳トレ的なものを始めたほうがいいと思ったものの、祖母にもプライドがありますし、「ボケてるからボケ防止のトレーニングやりーや」ともなかなかいえません。この本のタイトルがちょうどそこも考慮していて、気軽に薦めることができます。

    この本を試す前は待ち合わせの時間などを聞き返したり、勘違いして記憶していたのですが、そういったこともなくなりました。会話もスムーズになり、話題も多様になりました。こんな単純なドリルだけでこれだけ変わるのかと驚かされたのですが、変に凝ったことをするよりも実直にこういったことをこなしたほうが良いのかもしれません。

    この本を使ううえで難しいのは継続することで、飽きてしまったり、目が疲れる、書く手が疲れる、といった理由で中断することも多いと思います。そういう時はやはり家族で一緒にやって、耳や口を使ってこういったドリルを行っていくと良いでしょう。

    ちなみに犯人は捕まらず、警察のほうもお手上げです。やはり当の本人の記憶があいまいだと捜査のしようもないみたいですね。銀行の防犯カメラも録画の有効期限のようなものがあるので、犯行が何ヶ月も前だと残っていないみたいです。老人を狙った犯罪は今後もどんどん増えるでしょうし、家族で犯罪に巻き込まれないように配慮しなければいけない時代ですね。


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