英語圏、特にアメリカの大学院へ出願する際の出願動機書、statement of purposeの書き方は絶対にこの本しかありません。

イギリスの場合は一人の教授が勝手に合否を決められるような場合が少なくないので、そういった場合はこの書類がそこまで重要というわけではありません。アメリカの場合は複数の教授で何度か会議で話し合って合格者を決め、その際にここでまずい事を書くと落とされます。

大体出願者のGREなどの提出スコアは似たようなもので、外国人、とくにアジア人出願者がアメリカの大学院に出願する場合、アイヴィーなどの場合TOEFL100点ちょっと、GREの数学がほぼ満点近く、Verbalがかつての点数で言うと400ちょっと、GREライティングが3.5点くらいです。これくらいの点数がほぼ日本人の限界でほとんどはアジア人は同じようなスコアで提出しますし、ほかの国からの出願者も総合では同じような点数です。

つまり提出する試験のスコアはあまりかわらないので、そこで頑張ってとても高い点数をとってアピールするか、もしくはこのstatement of purposeを良いものにするしか合格する手段はありません。たとえば言語学の場合は200人近く出願して7,8人くらい合格と倍率が高いのでほかの出願者よりなんとかして抜きん出て目立つ必要があります。出願者のほぼすべてがTOEFLで100点を越えているような、もしくはGRE高得点者の猛者ばかりなので、誰が受かってもいいくらいの場合がトップ校だと当たり前だといわれています。故に運任せなところもありますが、運をなんとか引き寄せるためにこのstatement of purposeは重要です。

さらに、試験の点数がほぼみんな似たようなものな中、学校や学部によってはTOEFLやGREは足きりの基準にしかならず、合格の要因になり得ないこともあるので、statement of purpose 対策も十分に行うべきです。

私のホームページからも匂っているように、私自身かなり変わった経歴なのでうまく書けば良い意味で目立つ出願者になれるのですが、間違えるとあれこれやってて器用貧乏、知識が限られていそうだ、ほかの事をやっているぶん勉強に時間を割けないのではないか、といった印象を与えます。

今になってわかる事も色々あって、大切なのは結局入学後のプランをどう書くかが重要だと思います。この本にはまだ新入生ですらないのだから、そんな状況で詳細な研究計画なんて書けないから無理をしなくていい、入学後計画はたいてい変わるからそこまで気を配らなくても大丈夫といったことが書かれています。

多くの出願者がそういった書き方をしている中で、ある程度具体的な計画で研究の意義があることを示すことができ、なおかつその研究を行うのにその出願先の学校自体や指導教官が適していると説得力をもって示すことができればかなり有利になります。

大学側としても良い研究者になりそうな出願者が一番欲しいわけで、その将来の研究能力を示すことができる場所が唯一このstatement of purposeくらいです。

研究プランについては詳細に魅力的に書くべきなので、その点だけはこの本の趣旨と異なるかもしれませんが、それ以外はこの本の指示に基本的に従えば良いと思います。

この本では豊富なstatement of purposeのサンプルを掲載し、さらにそのサンプルのどの点が優れていてどの点に改善の余地があるのか説明されています。これらの情報がこの本の肝といえるので、とにかく読みこんで、自分の専攻と似た分野のサンプルを参考にしながら、オリジナリティがあって抜きん出た、優れた文章を書くと良いでしょう。

ただしこの本のサンプルで個人的に気になるのは、「私こそがこの学校にはふさわしい」「出願者の中で私が一番この学校に入るべきだろう」というくらいの強気な発言が例文の中に多いことです。アメリカでは普通なのかもしれませんが、ここまで真似しなくてもいいだろうと思います。謙虚に実力を示したほうが好印象ですし。

statement of purposeはネイティヴにチェックしてもらうのが必須です。さらに、ネイティヴでも英語力の差が激しく、文法ミスを犯すネイティヴ、適切な語彙を使えないネイティヴもとても多いです。好ましいのはアメリカの博士課程に入学しているようなネイティヴにお願いすることです。

とても重要な書類で、比重はGREやTOEFLよりも重い事が大学によっては十分ありうるので、この本を参考にしつつ何ヶ月もかけて、何度も書き直し、人にもチェックしてもらって、より良い文章にしましょう。