言語学者が選ぶ最強の語学書集(+語学学習法とか研究とか統計とか)

これまで数百冊の語学参考書を買ってきたので、特にお勧めできるものを言語学者の観点からご紹介。 語学書を活用する為の効率的な学習法や言語学の話題も。

    言語学あれこれ

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    学会発表でポスターを作製することになって、はてさてどうしたもんだろうと思う人も多いでしょう。

    口頭発表もそうですが、パワーポイントなどのソフトがどんどんバージョンアップしてデザインや様々なオプションも進化しています。つまり定型といったものがどんどん変わってきているので、本やネットを通して今のスタンダードが何かを知る必要があります。

    この本はそう考えると少し古いのですが、もっと根本的な、心構えや書かれるべき内容などが記載されているので時代を超えていつまでも参考にできるという点で名著といえるでしょう。

    プレゼンテーションはおそらく日本人の多くの方が苦手とする分野ですが、その苦手分野をスポ根で励ましてくれるこの本は多くの研究者を奮い立たせてくれます。

    パワーポイントなどでの発表方法についての情報はいろいろなところにあると思いますが、ポスターは少ないでしょう。

    私自信ポスターをどう作るべきか色々と悩んだので、メモついでにこちらに記載しておきます。

    基本的にはパワーポイントで作成。学会のフォーマットに合わせたサイズにする必要があるが、基本的にはA1,もしくはA0。A1の大きさがどれくらいかあらかじめ把握しておいたほうがいいので、自分の手持ちのA4用紙を8枚ならべてA1サイズを作ってみる(A0ならさらにその倍の16枚)。分割印刷できるプリンタや、分割印刷補助ソフトを使えば、ためしに作ったファイルをA4複数枚で印刷可能。最後の印刷前になるべくこういった手段で印刷して、実際のポスターサイズで見やすいファイルになったか確認。

    フォントは一番小さくても24、できれば28くらいで、Arial unicode MSやゴシックフォントなどをなるべく使う。ただし字数を稼ぎたい、たくさん書きたい、という場合はTimes New Romanが狭い範囲にたくさん書ける(見づらくないか検討しつつ)。

    イントロ、メソッド、結果、議論+結論を書いて最後に参考文献一覧と謝辞。

    参考文献一覧と謝辞はスペースがどうしても無い場合は削除するのもあり、だけれどもなるべく削除しないように。削除したいくらいのときは22くらいの小さめのフォントサイズにここだけしてしまうのも可。

    ポスターでの発表の場合は貼る場所がとても重要。大きい部屋だとしたら、一番奥の尚且つ外側はあまり人が来ない。スーパーマーケットのような感じである程度人の流れ方が決まっているので、どこに一番人が来るかを考えてなるべくそこに貼る。

    ポスターのプレゼンでだいたい最初に聞かれるのは、簡潔に言うとどういう内容?というものなので、あらかじめ簡潔に説明する原稿みたいなものを用意しておいてまるおぼえしておくと楽。

    内容をとにかく簡潔に、分かりやすく、チラっと見ただけでもわかるように書く。無駄な情報は省く。欲張って報告できることを全て報告しようとしない、重要なものだけ3つ程度。

    連絡先を書くのを忘れずに、それと持ち帰ってもらうようの印刷を20部くらい作っておく。ポスターやプレゼンは自分の研究を宣伝して、売り出すところ。

    英語での質疑応答で伝わらなかったり、ぎこちないとそれはそれで問題なので、英語で予測される質問のリストをなるべく多く作っておいて、それに対する返答の練習もしておく。なるべく簡潔に、そして明確に。できればそういった質問リストにたいする返答も録画して、聞き取りづらい英語になっていないか、わかりやすい内容かチェック。

    こんなところでしょうか。ネット上でも良い例悪い例、色々と見られるのでぜひともチェックしたいですね。こちらの本にも書かれていますが、発表の前は発表練習をします。やり方としてはパソコンのカメラを使っての録画です。そこまで良いマイクがついていないので、声はあまり綺麗に録音できませんが、そのマイク越しでも明快に聞こえるようなハキハキした話し方がベストです。音声だけではなくて、映像も録画するのは挙動をチェックするためです。意外と変なクセがあったりして、例えば私の場合は立ちながら発表していると左右にふらふら動いてしまうことが多く、パソコンのモニターばかり見て聴衆に目を向けない傾向があります。こういったことをチェックするためにも録画がおすすめです。

    こういったことはこの本にも書かれていて、全てをきちんとこなせている研究者は小数ですし、必ずしも正しいといえる答えがないのも研究発表ですが、意識すればいずれ改善されていくでしょう。本当にすごいプレゼン力をもっている研究者もいるので、この本を超えたプレゼンをその後は目指していくと良いでしょうし私も目指しています。


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    言語学で主に知覚実験を行う際に使うツールとして人気なのはDMDXです。

    ただし使い方がそれなりに難しく、自由度の高さゆえに不安定です。いざ実験開始、というときにバグで動かなかったり、原因不明のエラーが不定期に生じたりすると使うことができません。

    実験を設計する時はだいたい自由度が高いものを求めたくなるのですが、自由度が高く色々なことをすればするほど実験が不安定になります。

    そこでお勧めなのがもっとシンプルな実験作成ソフトを使うことです。凝ったことがしづらくなるのですが、使い方も簡単、エラーも少なく、安定します。反射速度を出来る限り正確に出力したい場合も対応できます。

    affectがまずは使いやすいものの一つでしょうか。
    このソフトで多くの実験をデザインすることができます。単純なことをやるのであれば、チュートリアルを参考にしつつ実験をデザインしていけば良いです。

    このソフトでやりたいことがうまく出来なかったという場合はOpenSesameで対応できます。

    これら二つでたいていのシンプルな実験はできます。OpenSesameは基本的にとてもシンプルで、それでいて色々なことができるソフトです。凝ったことさえしなければ多くの実験を作成できるでしょう。それでもこれでは不十分だと感じられることもあると思います。そういった場合はPython とOpenSesameを連携させることで、ほとんど何でもできるようになります。

    それゆえにOpenSesameでは単純でやりやすく、それでいて複雑で難しいことまでカバーされています。私の環境ではなぜかPythonがうまく連動できないのですが、それでもこのソフトで今のところ事足りています。

    こういったプログラムで実験を作成することが言語学のみならず、他の分野でもどんどん重要になってきていますが、残念ながらほとんどのソフトは難しく使いづらいです。人によってはここで紹介したソフトが全て難しすぎる、もしくは単純すぎてやりたいことが出来ない、と思われるでしょう。そういった場合は英語で使えそうなソフトを地道に探していくしかありません。

    語学学習の一環として、最終的には何か一つくらいプログラミング言語を使えるようにして、実験は自力で最初から作れるようになったほうがいっそ良いのかもしれません。語学学習に踏ん切りがついたらそちらに移行したいと思っています。

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    男女の言語の違いというものは言語学の研究分野では人気のあるものの一つで古典といえるものでも重要なものがたくさんあります。

    例えば、女性のほうが文法的に正しい表現をしてより礼儀正しい言葉づかいであることが多い一方で、男性は縮約系を頻繁に用いたり、あまり綺麗とは言えない言葉づかいをすることが女性より多いことが研究でも報告されています。ただ皆がわかっていることを実証しただけのように思えるかもしれませんが、こういった一般論が正しいかを扱う研究は重要で、逆に一般的なステレオタイプが間違っていることも証明します。

    社会言語学の分野で、男女のどちらがおしゃべりかを統計的に扱った論文があります。一般的には男性と女性の場合は女性のほうがおしゃべりだといわれていますが、それが事実かどうか調査しています。広い範囲の対象者の大量のデータを、偏らないように調整しつつ、検討した結果、男女間にどちらがおしゃべりか違いが無いことが証明されました。つまりよくしゃべる男性も無口な女性も多く、男のほうが無口だとか女性のほうがよくしゃべるというのは固定観念で、間違っていることが証明されました。

    また男女には発話時の違いがあり、その一つが発音です。女性は正統派な単語や文法を多く用いる一方で、発音が多様です。例えば音の高さ、声のピッチの上下も女性のほうが激しい傾向にあります。

    そして女性は新しい発音をどんどん取り入れる傾向があり、新しい発音にたいして柔軟に対応しますが、男性は発音に関しては多様性を言葉にもたせません。

    この柔軟さが、おそらくは、関係しているのですが、女性のほうが外国語の発音が良いです。これには発声器官の柔軟性が理由だと証明されているようですが、女性の発声器官は外国語に順応しやすく、そのおかげでネイティヴに近い発音ができるのはたいてい女性です。

    実際まわりを見渡してみると、試験で高得点を取っている日本人男性の英語の発音はいわゆる日本人的な発音であることがほとんどです。一方でネイティヴに近い発音ができるのはたいてい女性で、たとえばイタリア人男性とイタリア人女性も、英語レベルが同程度だとしても発音がネイティヴに近いのは女性のほうです。

    私自身男性ですし、発音もネイティヴ的では無いでしょう。その言い訳にもなってしまうかも知れませんが、男性の場合は発声器官の柔軟さが足りず、また他の柔軟性や様々な未解明の要因で、母語以外の発音に対応しきれません。このブログではさんざん発音の重要性を強調してますが、男性は特に頑張らなければいけませんね。

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    古い本ですが、改訂を重ね、今なお多くの言語学者に読まれる一冊です。

    基礎的な内容で、大学生で言語学を専攻している学生さんなどに特にお勧めですが、外国語を学ぶ全ての人々にお勧めの一冊です。特に言葉の音の発生原理や知覚について興味があれば楽しんで読めます。

    子音の発音は子音のメカニズム、どのように肺からの空気を遮るのか、さえ分かればすぐにネイティヴ並みの発音になるので、この項目を読んで、今現在学んでいる外国語の子音をIPAでなんと表記するか参考書などで調べ、そのIPAの発音をウィキペディアなどで確認するのをお勧めします。

    母音は舌の位置で基本的には変わる、ということもおさえておくと良いです。また、フォルマントの知識をここで身に付けておくと、praatなどで自分の発音した母音をネイティヴの母音と視覚的に比べられます。耳で聞いて比べるのは非常に感覚的ですが、視覚的な比較は理論的な分析になります。分析してネイティヴと母音が異なれば、母音は基本的には舌の位置が全てなので、舌の位置を調節しましょう。

    また、訳がとても素晴らしく、廣瀬肇先生が訳されています。先生のすごさを言葉で表しても陳腐になってしまうのですが、とにかく訳を見るだけで先生の造詣の深さがうかがえると思います。

    私自身今後も外国語の試験、おそらくはロシア語のものを受けますし、そのための対策も毎日しています。そういったところで成果を出すことで、言語学的な知識の有効性示していきたいです。ただでさえ忙しいのだから、言語学の本を読む時間は無い、と思われる人も多いでしょうし、それが間違いということも絶対にないのですが、個人的には回り道に見えてもある程度言語学を学ぶのは外国語学習に有効だと考えています。



    ↓のリンクは最新版のものですが、古い版も名著ですし中古でよりやすいので、予算をおさえたい場合はそちらで。

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    マニアックな内容ですが、書いてみます。

    学会のcall for papersようのabstractの書き方について色々。分野によって書き方は違うでしょうし、言語学だからといっても社会言語学系や統語論など他の領域の場合また異なるでしょう。私は音韻論、音声学専門なのでそれらを対象にしています。

    長さが色々学会によって異なります。英語で200語以内、500語以内、4000語以内などなど。

    私の場合1ページ以内で、もしくは2ページ以内で、という規定が多いです。

    書くべき内容は
    ・何についての研究か
    ・その研究はその領域でどのような位置づけか
    ・なぜ重要な研究なのか
    ・どのようになされた研究か
    ・結果と結論

    不必要な語は徹底的に避けて書く。

    1ページくらいのアブストラクトなら4-5くらいのパラグラフに分けて書く。

    パラグラフ1(2パラグラフに分けてもいい)
    何についての研究でなぜ重要か。研究背景を、研究分野について知らない読者に理解できるように、書く。
    これが難しく客観的に、背景知識が無い人にでも分かるように書かなければいけない。研究というのは何かのresearch questionを解くものなので何がなぜquestionなのかを書く。

    パラグラフ3
    Methods, どうやって実験を行ったのか、どういった反応をどう測ったのか、stimuliを使ったのならどういったものを使ったのか、なぜそれらを使ったのか。

    パラグラフ4
    結果、何を発見したのか。

    パラグラフ5
    まとめ、短いパラグラフでOK。結果が何を意味するのか。

    アブストラクトを書く場合規定で1ページ以内、などと明記されていてページ数が足りない場合はTimes New Romanが経済的。少ないスペースに多くの文字を書けて、これでだいぶ楽になる。フォントサイズや余白もある程度はいじれる場合もあるが、学会の規定によってはこれらも制限されているので注意。フォントは変えられる場合が多い。

    図を入れると効果的で分かりやすくなる。理解されなければrejectなので、理解されるように図は使う。

    研究背景を説明される為に参考文献を引用すると良い、その場合共著者がいればきちんとその共著者の名前も&でつなげて書く(andと書かない)。

    最後に、引用した場合、Referenceの後にきちんと引用した論文の詳細を書く。1ページのアブストラクトで引用するのは大体1~4件くらい、多すぎると、必要な情報を書くスペースがどんどん小さくなる。

    ちなみに、論文の最初に書く短いアブストラクトも構成自体は似ていて
    1研究背景、目的
    2方法
    3結果
    4まとめ

    こんな感じで。

    アブストラクトも論文も大切なのは中身ですが、英語が拙いせいで意味が通じない場合も、その拙さによる心象もどうしても結果に影響します。

    学会発表の英語発音が酷くて通じない、ということもありますが、書くほうも英語をきちんとしておかなければいけません。いつまでも英語の訓練はさぼれませんね。

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