言語学者が選ぶ最強の語学書集(+語学学習法とか研究とか統計とか)

これまで数百冊の語学参考書を買ってきたので、特にお勧めできるものを言語学者の観点からご紹介。 語学書を活用する為の効率的な学習法や言語学の話題も。

    ロシア語・語学学習書

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    ついにロシア語学習の世界を変える本が登場しました。名著のみを取り扱うというこのブログでも特別な本です。ロシア語学習という観点から世界を見たら、まさしく世界を変える本です。素晴らしすぎて読んだ時に手が震えました。

    上級を扱う本も無いような状況で(あっても絶版だったり難ありだったり)、この本は上級の内容をわかりやすく、丁寧に教えてくれます。上級として扱うべき単元や例文の選択も難しいもののはずですが、すべてを高い水準でクリアしています。

    個人的にこの本で最も好きでたまらないのは、例文の質の高さです。簡潔にその単元で扱っている内容を表しているだけではなく、応用してスピーキングやライティングでも使える内容になっています。そのおかげで、この参考書の例文をすべて暗記してしまえば、最高の例文集としての機能を果たします。英語やフランス語では例文集に優れたものが多く、読む、聞く、話す、書く、すべての場面で役立つのですが、ロシア語の例文集に関してはどの国にも優れた参考書がありません。

    例文暗記という学習法は日本で特に人気がありますが、日本人にとって相性が良い優れた学習だと思います。そういう意味でもこの参考書は例文だけでも買う価値があるくらいです。

    唯一残念なのはCDがついていないことです。とても分厚く内容が濃い本なのでCD一枚では収まらないでしょうし、予算的な都合でどうしても不可能だったのでしょうが、本当にこの点だけは残念です。

    私の場合は友人や親類にロシア人がいるので、お願いして例文を音読してもらって録音しようと思っていますが、そういった状況にいない場合はSNSや何かをつかって、どこかでロシア人をつかまえて録音すると良いかもしれません。それだけのことをする価値があるくらいに、音声での学習は有効です。

    発音に関してきちんとおさえておきたい場合はCDがついている参考書、初歩の発音であればニューエクスプレスロシア語などをお勧めします。

    英語以外の外国語学習において問題となるのは参考書不足と辞書の質です。たとえばトルコ語といった、日本での学習者が少ない言語に関しては十分な参考書が無く、辞書も語彙数が少なく、上級者になるのはきわめて困難です。仮にトルコ語検定のようなものがあるとしても、こういった環境では、検定一級は英語検定一級よりも比べようもないくらい難しいものになるでしょう。 

    フランス語やドイツ語あたりはそれなりに学習環境が日本でも整っていて、上級者になろうと思えばなんとか手が届きますが、ロシア語の場合は上級に至るために必要な参考書がほとんど出版されていませんでした。(現代ロシア語文法 中・上級編についてはまだきちんと読んでいないので、こちらも上級にふさわしい本かもしれませんが、せいぜいこの一冊です)。やっとこれで上級者になれる土壌が整ったという感じですね。

    英語で書かれた外国語学習の本はよいものが多いので、日本語で無ければ英語で出版されたロシア語学習書を使うとよいのですが、ロシア語はそこまで良い本がありません。

    そういった意味で個人的には世界でもっとも優れたロシア語学習書だと思っています。


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    ロシア語の参考書はいろいろとありますが、その中で最初の一歩として最も最適なのがこの「ニューエクスプレスロシア語」です。

    ロシア語の参考書として名著といえるものは「NHKCDブック 新ロシア語入門」佐藤 純一著や「NHK出版 これならわかる ロシア語文法 入門から上級まで」 匹田 剛著、などですが、初級者にはこちらのニューエクスプレスのほうが適しています。まず前者のほうは、内容がとても硬派で、掲載されている例文を初級者が実際につかうようなことはほぼ無いと思います。後者はCDがついていないので、発音がまったくわからないまま学習を進めることになりますし、発音に関する記載もほとんどありません。まさしく文法書です。

    こちらのニューエクスプレスはCDもついていますし、掲載されている例文も応用しやすいものです。こちらの例文を覚えて、場合に応じて語彙を多少入れ替えれば最低限の会話は成り立つくらいになるでしょう。

    ニューエクスプレスシリーズは色々な外国語を対象に出版されていますが、おそらく型が決まっていて、ニューエクスプレスの本は、タイトルを見なくても、中身だけでなんとなくわかります。そしてその型が非常に優れていて、初心者が使いやすい例文で、覚えるべき単語ばかりを使って、わかりやすく説明してくれます。

    内容は本当によくあるもので、そこまで特別な印象は与えないかもしれませんが、王道の安心できる内容です。文字の読み方、発音、基本的な文法、動詞の活用などをシンプルにわかりやすく書いてくれています。

    文法事項の多くははほかのロシア語参考書と重複しますが、内容が難しい本が多いので、ニューエクスプレスで慣れてからより難しい本に進むのをお勧めします。特に「これならわかる ロシア語文法 入門から上級まで」をある程度理解できるようになれば、文法に関してはあまり困ることがなくなります。

    ほかにも初級用のロシア語参考書はありますが、この本が一番要点をわかりやすく、うまくまとめています。

    あえて難癖をつけるのなら、カタカナでの発音の表記が不適切で、これでは伝わらないというものがちらほら混じってます。そこだけは注意ですね。

    日本のロシア語学習環境は距離が近いこと、そしてロシア文学の研究が日本では発展していたこと、そして皮肉なことに戦争があったことなどもあり、学習のために必要なものが整っています。さまざまな外国語について書かれている英語の本ですら、ロシア語の文法書で良いものはあまりありません。辞書も英露や露英の良いものはロシアにも英語圏にもなく、変な話かもしれませんが、日本語でのロシア語学習が世界的に一番良いかもしれません。


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    日本語でもロシア語の発音に関しては神山 孝夫先生による名著「ロシア語音声概説」がありますが、英語ではこちらのThe Phonetics of Russianが最高峰です。ただ単純にページ数も多く、細かい内容が扱われています。

    ロシア語の発音を学ぶうえでもちろん有効で、子音や母音、アクセントやイントネーションなど重要な箇所は全て網羅されていて、母音のための舌の位置や、子音のためにどことどこをくっつけて気流の流れをさえぎるか、などなど全てわかりやすくイラストで紹介されているので、初級者から上級者まで発音の確認下できます。

    さらに、この本は「発音」それ自体も扱っていて、たとえばささやき声がもつ特徴などまで紹介されています。同じ強さで同じ高さの音を出そうとしても、ささやき声の場合はどの母音かによってピッチ、声の高さが変わってしまうということです。

    長所でもあって欠点でもあるのは、この本がとにかく英語とロシア語を比較することです。読者層が明らかに英語話者に絞られていて、英語話者であればわかりやすいことも日本人にはわかりづらいこともあるかと思います。英語話者がロシア語を学んだ場合の発音上の問題などはほとんどの日本人にとって不要な情報でしょう。

    それでも、英語の発音をある程度学んだ人や、英語とロシア語の比較研究を行っているような日本人にはこれ以上ないというほど素晴らしい本になります。

    英語とロシア語の発音の類似点は、日本語と英語の類似点よりはるかに多く、ロシア語を学ぶことで英語の発音の理解が深まりました。英語のストレスアクセントはただ単純に強いだけではなく、ピッチも際立っていたり、長かったりしますが、ロシア語は長さが重要だったり。一方で、ロシア語も英語もアクセント間のタイミングがわりとコンスタントで同じようなリズム構造をしていたり。他の角度から、今まで見えてこなかった英語の発音の側面が見えてきた感じがします。

    語学学習は多くの人にとって「ついで」なので時間を割くのがとにかく難しいですし、英語だけでも大変なのにロシア語までとなるとそうとう難しいです。それでも普通の人がしない事をやるからこそ得られる知識もあり、そういった個性はあらゆる場面で武器になります。ロシア語を学ぶ人だけではなく、英語学習者の方々にも、この本を読んで英語の発音の特異性などを学んで、ロシア語との共通点から発音の理解を深めて欲しいです。


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    英語以外の外国語関連書籍はとにかく数が段違いで少ないです。そのため良い本が少なくロシア語でも、ここのブログで取り上げている本もありますが、全ての良著が英語学習の名著と同じような品質とはいえません。

    そんな中で本当に力が入った名著と思えるのがこのUltimate Russianです。個人的には現時点で最も重要なロシア語参考書だと思っています。

    初級用の軽い、ページ数や文字数も少ないロシア語の文法書では良い本が既にありますが上級者向けの本は皆無です。このUltimate Russianは二冊あり、入門用と上級用にわかれています。

    入門用の方もなかなか日本ではカバーされていない中級を扱っていて、とにかく量がすごいです。二冊あわせて1000ページ近くあります。

    作りも正統派で、人との初対面の時の会話、空港での会話など実用的な例文で構成されています。つまり用いられている語彙も必須用語ばかりで厳選された、覚える価値がある頻出語ばかり使われています。これらはとても重要で残念ながら、ロシア語文法書でおそらく最も売れている「NHK新ロシア語入門」での例文は普段使うことが無いような状況のものばかりでそもそも会話文が少なく、語彙もあまり使わないようなものが少なくないので、個人的にはこちらのUltimate Russianのほうが好きです。

    実用的で普段の会話で使えるような文章がこの本に多いというのはとても大きなメリットで、会話や作文でも役立ちます。シャドーイングや音読などで例文を覚えてしまうと、あとはその覚えた例文の語彙をほかのものと入れ替えて、テンプレートとして使うと質の高いロシア語作文やロシア語会話が可能になります。

    また、適切な語彙の選択のおかげで巻末の語彙リストが優秀な単語集として機能します。特に上級用の方の巻末の語彙リストはロシア語能力検定試験の一級や二級対策に役立つと思います。単語集が少ないロシア語でこれは本当に助かります。是非カード化して、本文のシャドーイングと併用して語学力をあげたいところです。

    文章の長さもとてもよい長さで、リスニング教材としても使えます。ロシア語試験などではある程度の長さの文章を聞く問題がありますが、普段短い文章ばかり聞いているとなかなか対応できないので、普段からこういった本で十分な長さの音声ファイルを聴いておく必要があります。

    この二冊をひたすらシャドーイングして、動詞の活用や格などもまた別途にお経スタイル音読すれば、上級者になれるはずです。

    CDも発売されていたのですが、現在入手困難です。ebayで海外から取り寄せたり色々と苦労しなければ入手できませんが、なんとか入手できるレベルです。入手があまりにも難しい場合は、SNS経由や何かでなんとかロシア人の知り合いを作り、その人に朗読してもらって自作の音源を作ると良いです。私もネイティヴに直接たのんで、CDがついていない教材の音源を無理やり作ったことがありましたがとても有用でした。

    問題点が無いわけではなくて、誤植が非常に多いです。文中の英語にしろロシア語にしろミスが目立つので注意して学習する必要があります。優れた参考書がロシア語ではこれ以外にあまりないので、もう仕方ないと割り切るしかありませんが。

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    日本人にとって発音が簡単な言語と難しい言語があり、おそらく簡単な部類なのはスペイン語やイタリア語ですが、逆に難しいものの代表は、個人的には英語だと思っています。もちろんヨルバ語や特殊な子音を使うアフリカの言語も難しいでしょうが。

    英語の難しいところはまずストレスアクセントがあること、そしてそのストレスアクセントの有無に応じて母音の発音が変わり、日本語には存在しないシュワー、あいまい音があることです。

    日本語とはこのように大きく異なり、尚且つ複雑な発音体系の英語はそういった意味で難しいのですが、ロシア語も全く同様の理由で難しいのです。

    発音の難しさから発音に特化した本が必要なのですが、英語以外の外国語ではそういった本が無いこともよくあります。そんな中で幸運にもロシア語では発音に関する名著があり、それが今回ご紹介の「ロシア語音声概説」です。

    I章とII章は人の声、母音子音などに関するもので、IPAの知識があるような人であればすらすらと読めると思います。

    III章からロシア語の発音になります。ここからは何度も繰り返し練習して、読み返して、ロシア語の発音を体得する努力をしていく単元です。書かれた説明どおりにやっていけば自然に発音が改善されていくでしょう。

    この本は他の発音関連の本よりも興味深い点が多々あり、その一つが第VI章の「日本語話者が注意すべき音連続」です。

    母国語がどうしても外国語の発音を邪魔してしまうのですが、そういった事にまで言及する本はとても少ないです。この章からもわかるように、それでも、この「ロシア語音声概説」は日本人を対象に書かれているということが、ただ日本語で書かれているからという理由だけではないことがわかります。

    例えばчитатьと読むときに、最初のиの母音を知らないうちに発音せずに子音のчの音しか発音しない傾向が日本人にはあります。実際私もそうでした。母音や子音をきちんと発音しようとすることに意識する人はまだいるでしょうが、ここまで意識する人はなかなかいませんし、ここまで意識を向けた本はほとんど存在しません。

    またアクセントにも多くのページ数が割かれていて、これも個人的には非常に関心したことです。ロシア語は先述の通り、アクセントの位置、有無によって母音の発音が変わるので、アクセントの理解というのは発音の改善に必須事項です。

    ロシア語の場合は格変化や名詞か形容詞かによって同じ語でもアクセントの位置がしょっちゅう変わるので、アクセントをきちんと把握して発音することは至極難しいです。それでもこちらの本では出来る限り体系的に、覚えやすく、理解しやすく説明されていて、アクセントの位置を推測できるようになってきます。

    最後に、なんとこの本ではイントネーションまで細かく解説しています。イントネーションも意図を伝える重要な情報で、ニュアンスや感情表現に大きく貢献します。また言語によって異なるので、意識しなければどうしても不自然なイントネーションになってしまいます。

    個人的にはリズム(シラブルの長さ、アクセント有無でシラブルの長さが変わるか、アクセント間のリズムが一定かどうか)、イントネーション、母音、子音、これらを全てきちんと意識して勉強することで初めてネイティヴに近い発音が出来るようになると思っています。もしくは母国語を忘れてその外国語を第一言語にしてしまうしかありません。

    英語でもこれほどの本はなかなかありませんし、日本人向けに綺麗にデザインされたこの本は間違いなく名著です。
    英語では"Introduction to Russian Phonology and Word Structure" "The Phonetics of Russian"などが発売されています。


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    教材が限られるロシア語学習のなかで特に重要な本と言えるのがこの「ロシア語で読む罪と罰」です。対訳本はそれ自体語学学習にむいているのですが、この本のすばらしい点は2時間もの音声CDがついていることです。

    ロシア語教材で特に困るのがリスニングです。このブログで何度も強調していますが、リスニング対策は効率的な語学学習に不可欠なのです。リスニングは自分でスピードをコントロールできないリーディングのようなもので、リスニングをしていれば自動的に読めるようにもなりますし、なんども繰り返して聴けば、フレーズを覚えてしまって、それを会話や作文に応用できます。特にシャドーイングをすると後者の二つの技能が飛躍的にのびます。シャドーイングはリスニングしながら、聞こえた音声をそのまま真似して口にだすというもので、スクリプトは見たり見なかったり、黙読したり、色々やり方を混ぜながらやると効果的です。

    ロシア語でシャドーイングをするというと、ロシア語のとっさのひとこと、などがあるのですが長文のリスニングの対策ができません。たいていの試験のリスニングはある程度の長さがありますし、それはそれで慣れが必要です。

    教材が不足しているなかで、その穴をもっとも綺麗な形で埋めてくれる本とも言えるのがこの本です。実際の「罪と罰」では文学的な表現があるので、文法上も、なかなか日常生活や試験にはでてこない表現が多く、しかも自力で読むのがかなり困難です。しかしこの本では比較的平易な、とはいっても上級者にも対応できるような、ロシア語で書かれた文章に書き変え、それを朗読しているので外国人の学習に適したものになっています。

    シャドーイングをしてれば勝手に語学力が上がるのですが、それには大量に色々な文章をシャドーイングしまくる必要があります。できれば異なる種類のものをシャドーイングすると良いので、ぜひこの本とロシア語のとっさのひとことを何度も何度もしつこく聴いて、口に出して、ロシア語を学習したいと私自身も思っています。


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    例文集は読む聴く書く話す、全てに役立つので是非とも一冊はいい本が欲しいのですが、ロシア語ではなかなかちょうど良い本がありません。

    個人的には例文だけなら、研究社露和辞典の使用頻度が高い語の箇所の例文でちょうどよいものを選んで500文程度覚えることをお勧めします。例文の質も良いですし、これだけでどんな場合でも対応できる文法集が自分で作れます。

    しかし、そういった作業をする手間もありますし、一番の問題は音声ファイルが無いことです。イタリア語やスペイン語のように日本語のカタカナ発音で問題ない言語とは違って、英語やロシア語はあいまい音や日本語にはない母音のために発音が難しく、ネイティヴの録音を聞きながら発音を覚える作業が必須です。

    こういった難しいロシア語学習環境の中でこの「とっさの一言辞典」のみが録音つき例文集として役立ちます。

    例文の数が7000ほどあり、英語教育の名著「基本英文700選」の10倍もありますが、一文一文は短いです。ビジネスから日常生活まで幅広く網羅しているので、この一冊でだいぶロシア語能力は伸びます。例文の数の多さは、収録されている単語の多さにも直結するので、重要な単語のみ、大量に覚えることができます。ただ、単語の意味は書かれていないので、わからない単語があった場合は辞書でひく必要があります。意訳的な用法も多いので、例文の文章から意味を推測して単語の意味を覚えるのはお勧めできません。

    凝った構文は収録されていないので、読解対策としては別途難しい構文になれる学習法をする必要がありますが、上級まで聴く、書く、話すに関してはこの本だけでもかなり対応できると思われます。

    これしかないので、と理由でのお勧めでもあるのですが、これだけのボリュームの本はなかなかありませんし、録音の分量の多さもすばらしいです。「基本英文700選」のように効率化を追い求めたような例文集で質の良いものがロシア語にも欲しいのですが、この本も十分購入価値があります。


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