言語学者が選ぶ最強の語学書集(+語学学習法とか研究とか統計とか)

これまで数百冊の語学参考書を買ってきたので、特にお勧めできるものを言語学者の観点からご紹介。 語学書を活用する為の効率的な学習法や言語学の話題も。

    発音関連

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    テキスト読み上げソフトが最近どんどん改善されてきていて、外国語学習の補助として使えるようになってきました。ニュースのテキストや自分が好きなwikipediaの項目などを音読してもらって、外国語学習の手助けをしてもらえます。あくまで補助的なもので、重点をおくものではないと意識しなければいけませんが。

    昔はこういったサービスはあまり実用的ではなくて、ロボ的な、極めて人工的な音声であまりにも自然発話とはかけ離れていました。

    もともとこういったプログラムの根本は様々な命令にあって、「こういう時はこう読む」というルールのようなものをこと細かく色々決めて、そのルールに則ってコンピューターが読み上げるような感じでした。ただここのところこういった手法は消えて、膨大なデータベースから発音パターンを流用するような形に落ち着いています。

    このデータベースの大きさや質、それを流用する方法の整備などが、こういったテキスト読み上げのレベルを上げますがどうしても英語がリードしています。英語の研究者も多いですし、こういったサービスに従事している人も多いので、他の言葉の読み上げレベルと比べて英語が圧倒的に優れています。次いでフランス語、ドイツ語、日本語あたりでしょうか。

    オンラインのフリーサービスで十分使えるものがあるのでいくつか挙げておきます。

    INOVA
    https://www.ivona.com/
    英語はもちろん、ロシア語やトルコ語など多くの外国語の読み上げまでしてくれます。
    読み上げのスピードは変えられません。発音の質はかなり良いです。

    ImTranslator.com
    http://text-to-speech.imtranslator.net/speech.asp?dir=en
    こちらも英語から、ロシア語、韓国語やその他いろいろ、発音の質も良いです。読み上げ速度を変更できるのも助かります。

    IBM Watson
    https://text-to-speech-demo.mybluemix.net/
    基本的に上記の二つと似たような感じですが、音声ファイルとして保存できます。

    こういった読み上げサービスの発音は単語それ自体の発音は良いのですが、どうしてもイントネーションがおかしくなりがちなので、あまり聴きすぎて変なイントネーションで発音しないように気をつけなければいけません。

    私はこういったサービスで作った音声ファイルを聞くのはジョギング中や、単純な仕事、たとえば簡単なデータ解析だとか、プログラミングしている最中だとか、メールをひたすら書いている時です。音声ファイルのもとになっているのはwikipediaの言語学関連の項目や、論文です。論文を聞けるっていうのは実はなかなかできないことですし、とても助かってます。

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    英語はとにかく発音の面で日本語と異なるシステムが多く、そのおかげで日本人には発音がとても難しいです。

    前置詞や冠詞以外の語は一つのシラブルが強く発音され、その際に弱く発音されるシラブルとは異なった母音になります。子音もどのようにもしくはどこに舌、歯、唇を動かすかが難しく、特に日本語には無い子音の場合発音が難しくなります。

    こういった問題をわりと楽に解決するにはIPAをWikipediaなどで調べて、練習してみることです。こういった勉強は面倒ですが、英検一級を超えるくらい、とにかく日本人の限界というくらいに英語力をあげるためには必須ですし、その道のりの近道に最終的にはなります。

    以前はこういったIPAによる発音の記述は発音辞書で調べて、自分の発音がきちんとしているか確認できましたが今ではオンラインで、しかも無料でチェックできます。それがCambridge Dictionaries Onlineです。

    特に優れているのは、IPAとともに音声ファイルも用意されていて、IPAについての知識が無くてもわりと楽に発音を確認できることです。確認ついでにIPAに慣れていくと後々有益なので、ついでにIPAの記述がどうなっていて、どういった記号ならどういった音かを常に確認したほうが良いでしょう。

    アメリカ英語とイギリス英語の両方に対応しているというのもすばらしいですね。紙の発音辞書より優れている点は検索機能で、発音チェックの速度が向上し、結果的に発音改善にかかる時間も減ります。

    紙の発音辞書も好きですし、特に最近のものはCDの中に辞書ソフトがついているのでオフラインでも使える発音辞書として非常に魅力的ですが、こちらのケンブリッジのオンライン辞書は無料でこのクオリティです。

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    男女の言語の違いというものは言語学の研究分野では人気のあるものの一つで古典といえるものでも重要なものがたくさんあります。

    例えば、女性のほうが文法的に正しい表現をしてより礼儀正しい言葉づかいであることが多い一方で、男性は縮約系を頻繁に用いたり、あまり綺麗とは言えない言葉づかいをすることが女性より多いことが研究でも報告されています。ただ皆がわかっていることを実証しただけのように思えるかもしれませんが、こういった一般論が正しいかを扱う研究は重要で、逆に一般的なステレオタイプが間違っていることも証明します。

    社会言語学の分野で、男女のどちらがおしゃべりかを統計的に扱った論文があります。一般的には男性と女性の場合は女性のほうがおしゃべりだといわれていますが、それが事実かどうか調査しています。広い範囲の対象者の大量のデータを、偏らないように調整しつつ、検討した結果、男女間にどちらがおしゃべりか違いが無いことが証明されました。つまりよくしゃべる男性も無口な女性も多く、男のほうが無口だとか女性のほうがよくしゃべるというのは固定観念で、間違っていることが証明されました。

    また男女には発話時の違いがあり、その一つが発音です。女性は正統派な単語や文法を多く用いる一方で、発音が多様です。例えば音の高さ、声のピッチの上下も女性のほうが激しい傾向にあります。

    そして女性は新しい発音をどんどん取り入れる傾向があり、新しい発音にたいして柔軟に対応しますが、男性は発音に関しては多様性を言葉にもたせません。

    この柔軟さが、おそらくは、関係しているのですが、女性のほうが外国語の発音が良いです。これには発声器官の柔軟性が理由だと証明されているようですが、女性の発声器官は外国語に順応しやすく、そのおかげでネイティヴに近い発音ができるのはたいてい女性です。

    実際まわりを見渡してみると、試験で高得点を取っている日本人男性の英語の発音はいわゆる日本人的な発音であることがほとんどです。一方でネイティヴに近い発音ができるのはたいてい女性で、たとえばイタリア人男性とイタリア人女性も、英語レベルが同程度だとしても発音がネイティヴに近いのは女性のほうです。

    私自身男性ですし、発音もネイティヴ的では無いでしょう。その言い訳にもなってしまうかも知れませんが、男性の場合は発声器官の柔軟さが足りず、また他の柔軟性や様々な未解明の要因で、母語以外の発音に対応しきれません。このブログではさんざん発音の重要性を強調してますが、男性は特に頑張らなければいけませんね。

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    今回は東京外国語大学言語モジュールのご紹介です。

    ネット上であったらいいのにな、と思うサービスとして、分からない母音や子音をクリックしたら音が再生されるものを求めていました。本で勉強している場合は、付録のCDを聴こうというは面倒くさかったり、聞きたい音一音だけ聴いたりするのは難しく一つ一つの子音や母音をきちんと把握できません。

    そこでとても有効なサイトがこの東京外大の言語モジュールです。これで無料というのがすごいですね。ものすごく充実していて、しかも多くの外国語と日本語の情報があります。

    ここで特にお勧めなのはIPAの子音のところで、主要な子音のほとんどを生の声で聴けて確認できます。自分が学んでいる外国語の子音がIPAでどう表記されるかを、参考書やwikipediaなどで確認して、その音をこちらで聴いて練習しましょう。

    このIPAのセクションの発音はとても綺麗で、色々な配慮がなされた録音である事がわかります。誰の声かは存じませんが、きちんとした言語学者の方でしょう。

    個人的によく参考にしているのが日本語とロシア語の発音のところで、日本語のアクセントのパターンや特徴など勉強になりますし、わかりやすくまとめられています。日本語を専門的に学ぶ留学生たちにも見てほしいです。

    特に充実しているのはこのモジュールでは発音関係ですがいくつか理由があると思います。

    まずはインターネットのブラウザ上で勉強する場合、クリックして音がでるというのが大きな利点なので、それも理由の一つでしょう。

    あとは言語学者と外国語学習者の間に微妙な壁があり、その壁が発音の学習環境の発展を妨げているからです。少なからず言語学者は世間の参考書とは違うかたちで、研究の成果を活かしやすい発音教育に力を入れたいと思っているでしょう。

    音声学や音韻論を学んだ人たちから見ると、参考書などの発音に関する説明は、わかりやすい説明ではあるものの、正確ではなく、ネイティヴには伝わらない可能性があると思えることが少なくありません。

    もちろん参考書の説明は間違っていません。紙面のスペースの都合や、発音にあまり時間をかけると学習者が飽きてやめてしまう可能性があること、などなど色々理由があると思います。

    それでも発音は一度クセがついてしまうと、矯正するのが難しいので、最初から強い志をもっている学習者はまず発音をきちんと学ぶと最終的には近道になります。

    語学の学習に行き詰ったと感じた場合は、息抜きもかねて別の視点から、こういったモジュールや発音関連の本、言語学の本などを通して学習自体を見つめなおしてみるのも良いでしょう。

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    古い本ですが、改訂を重ね、今なお多くの言語学者に読まれる一冊です。

    基礎的な内容で、大学生で言語学を専攻している学生さんなどに特にお勧めですが、外国語を学ぶ全ての人々にお勧めの一冊です。特に言葉の音の発生原理や知覚について興味があれば楽しんで読めます。

    子音の発音は子音のメカニズム、どのように肺からの空気を遮るのか、さえ分かればすぐにネイティヴ並みの発音になるので、この項目を読んで、今現在学んでいる外国語の子音をIPAでなんと表記するか参考書などで調べ、そのIPAの発音をウィキペディアなどで確認するのをお勧めします。

    母音は舌の位置で基本的には変わる、ということもおさえておくと良いです。また、フォルマントの知識をここで身に付けておくと、praatなどで自分の発音した母音をネイティヴの母音と視覚的に比べられます。耳で聞いて比べるのは非常に感覚的ですが、視覚的な比較は理論的な分析になります。分析してネイティヴと母音が異なれば、母音は基本的には舌の位置が全てなので、舌の位置を調節しましょう。

    また、訳がとても素晴らしく、廣瀬肇先生が訳されています。先生のすごさを言葉で表しても陳腐になってしまうのですが、とにかく訳を見るだけで先生の造詣の深さがうかがえると思います。

    私自身今後も外国語の試験、おそらくはロシア語のものを受けますし、そのための対策も毎日しています。そういったところで成果を出すことで、言語学的な知識の有効性示していきたいです。ただでさえ忙しいのだから、言語学の本を読む時間は無い、と思われる人も多いでしょうし、それが間違いということも絶対にないのですが、個人的には回り道に見えてもある程度言語学を学ぶのは外国語学習に有効だと考えています。



    ↓のリンクは最新版のものですが、古い版も名著ですし中古でよりやすいので、予算をおさえたい場合はそちらで。

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    英語は日本語と共通の母音や子音が比較的少なく、独特のリズムやアクセントのパターンをもっているので、特に発音が難しい言葉です。

    こちらで紹介している発音関連の本のなかでも「日本語音声学入門」やPronunciation Dictionaryは特におすすめなのですが、これらとあわせて使用すると有益なのがこの「超低速メソッド英語発音トレーニング」です。

    書かれている文章ももちろん役立つのですが、特に個人的に好きなのは音声ファイルです。ゆっくり発音を確認でき、音を把握しやすくなります。こちらで説明したように、ヘッドフォン必須です、スピーカーでは聞かないほうが学習には良いです。さらに自分の発音を録音して、それをネイティヴのお手本と聞き比べるのも重要です。

    こういったゆっくりとしたネイティヴの発音というのはネット上でもなかなか手に入らない貴重なものです。さらにこれを視覚的に見ることで自分の発音が正しいのかを感覚ではなく、理論的に正確に確認できます。このゆっくりとした発音が、視覚的な確認にも有益です。

    視覚的に見るというのはどういうことかと言うと、音声解析ソフトでフォルマントを確認します。そのソフトとしてお勧めなのがpraatです。言語学者が音声解析をする場合はたいていこのソフトです。フリーですし、性能は十分です。

    ただし使いづらいので別エントリーに使い方を簡単に説明しておきます。

    頻繁に視覚で確認するのも面倒かもしれないので、この本の指示に従った練習を繰り返し、自分の耳で鍛えて、その成果を視覚でチェックしましょう。

    とにかく発音矯正は語学学習の根幹、リスニングに直接役立ち、スピーキングやライティングも間接的に改善します。


     

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    英語の発音辞書の双璧二冊をご紹介です。

    二冊のうちどちらも同じくらいお勧めです。私は二つとも持っていますが、両者ともに似ています。最善を尽くすと結局は似てしまうのでしょう。LONGMANのほうは、単語の発音がネイティヴの間でもばらけていて、どれくらいの割合の人がどう発音するかという情報がある特定の語彙に書かれていてとても面白いのですが、紙面の都合上たまに書かれている程度です。今後辞書が発展すれば、CDかDVDに収録した辞書にそういったデータがそれぞれの語彙に含まれ、さらに年代、時代によってどのように変わるかということまで含まれるでしょう。辞書は言語学者の成果の結晶の形の一つ、夢が広がりますね。

    発音辞書なんてものが存在するというのは、英語の発音がいかにややこしく、体系的に説明できないイレギュラーさがあるか、ということを示していると思います。これはつまりきちんと発音を勉強しないときちんとした発音はできないということも意味しています。

    発音が悪ければ相手が誰であっても通じませんし、自分が思っている正しい発音が間違っていると相手が何を言っているかわかりません。子供がそうするように耳で言葉を覚えるのが効率的という研究も第二言語習得論などでは見られます。私自身も発音を一から見直して、勉強法方を「読み書き」から「聞き話し(シャドーイング中心)」に変えて急激にTOEFLのスコアが伸びたので、発音の矯正は語学力の底力を上げる為に必須だと信じています。

    残念ながら英和辞書は発音表記に関しては間違いが少なくないので、発音矯正のためにも発音辞書の購入をお勧めします。試しにA4で1ページ程度の英文の、Iやandといった知っているつもりの語彙も含めて、全ての発音を発音辞書で調べてみることをお勧めします。母音と子音、そしてアクセントの位置、アクセントの有無を一語一語確認すると、日本人のほとんどは絶望するくらい自分の発音の認識が間違っていることに気づくはずです。間違いに気づくというのは成長の大きな一歩ですから、これだけでも発音辞書は有益です。その後は発音が気になったらその都度辞書をひくようにして、リスニングやシャドーイングの際にアクセントや母音子音に気を配りながら学習を続ければ順調に発音は改善され、こつを掴めば発音辞書も頻繁にひかずにすむようになります。

    ちなみに発音辞書はIPAでネイティヴの子音や母音がどう発音されるか記載していますが、そのほかにストレスアクセントの位置と、シラブルの境界、どこで区切られるかが書かれています。

    シラブルの区切りがどこなのか、というのも体系やルールで説明できずネイティヴの多くが境界だと感じる箇所が境界です。シラブルの把握が役立つと感じられるのは研究者か文学好き、もしくは音楽好きくらいかもしれません。韻文詩のリズム構造はシラブルが単位になっていますし、音楽に当てはめられる時も一つの音に対して一つのシラブルが当てはめられます。音楽や詩からシラブルを見て、言葉と芸術を感じるのも言語を学習したからこそ得られる喜びの一つです。



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