言語学者が選ぶ最強の語学書集(+語学学習法とか研究とか統計とか)

これまで数百冊の語学参考書を買ってきたので、特にお勧めできるものを言語学者の観点からご紹介。 語学書を活用する為の効率的な学習法や言語学の話題も。

    英語スピーキング

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    基本的に私はカタカナ英語には反対で、カタカナ英語を無くすために中学校の教科書などにも発音記号の説明や発音練習を盛り込んで欲しいと思っています。ただし、この本だけは例外です。

    英会話で一番重要なのは結局通じるか通じないかです。文法がぐちゃぐちゃだろうが、カタカナ英語だろうが、通じるのなら誰も文句を言いません。逆に文法が完璧で、カタカナ発音では無いとしても、ネイティヴが理解できないような英語なら問題と言わざるを得ません。

    そういった事を踏まえると、カタカナ英語も通じるのなら問題ないです。若い方はまだ発音が矯正しやすいかもしれませんが、40代後半くらいの方々は色々な意味で矯正が難しくなりますし、下手にネイティヴ的な発音を目指すよりは、通じるカタカナ英語を完成させたほうが遥かに容易です。

    この本で紹介されている例文は、確かに伝わりそう、と思えるもので、なおかつ普通の「スペルそのままカタカナ発音」よりは遥かに良いものばかりです。なので、今現在の英語の発音がいわゆるカタカナ発音で、時間的にも発音練習の余裕が無くネイティヴのような発音は目指さないという方に特に有益な情報ばかりです。

    根本的なことを言うと、特に男性にお勧めです。カタカナ発音が多いのは男性だと思われる方が多いのではないでしょうか。女性はネイティヴに近い発音ができるように感じられますが、典型的なカタカナ発音は男性の場合非常に多いです。これは発声器官、筋肉の構造上仕方がないことで、男性の器官ほうが非母国語の発声に不向きです。

    私もそうですが、なんとなく、男性のほうが英語の会話を躊躇したり、引け目を感じてしまうことが多いように思います。そういったコンプレックスを感じる人が多いなかで、池谷先生の文章は優しく易しく、カタカナ英語について説明しています。

    私のような末端の人間からすると池谷先生のような人は挫折なんて無縁のようにも思えますが、謙虚にご自身の英語について書かれています。こういった実直さから垣間見える人間性も、先生の能力の高さを間接的に示しているようにも感じます。

    池谷先生はすさまじい業績を稼いでいて、優秀といわれる人達が必死に毎日働いても到達できないような境地にすでに達しています。きちんと高いレベルで一定数の研究論文を書いて、学校でも教えて、非研究者でも読めるような本まで書く。これらを全て高いレベルでこなすというのは本当に難しいことで、ものすごく優秀とされる人でも研究と教育、もしくは本と教育くらいで限界になります。

    この本での文章も非常に明快でわかりやすく、尚且つ間違った情報を与えないようにという配慮が端々から感じられます。まさに論文を書く上で重要な点でもありますし、こういった配慮のおかげでとても読みやすい文章です。誰でも読めるし、読んだら誰でも理解できる、そんな本です。

    お勧めできる層や状況はもしかしたら少し狭いかもしれませんが、英語の発音がすでによく出来る方でも新しい発見がある、読んでみる価値のある本です。


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    英語はとにかく発音の面で日本語と異なるシステムが多く、そのおかげで日本人には発音がとても難しいです。

    前置詞や冠詞以外の語は一つのシラブルが強く発音され、その際に弱く発音されるシラブルとは異なった母音になります。子音もどのようにもしくはどこに舌、歯、唇を動かすかが難しく、特に日本語には無い子音の場合発音が難しくなります。

    こういった問題をわりと楽に解決するにはIPAをWikipediaなどで調べて、練習してみることです。こういった勉強は面倒ですが、英検一級を超えるくらい、とにかく日本人の限界というくらいに英語力をあげるためには必須ですし、その道のりの近道に最終的にはなります。

    以前はこういったIPAによる発音の記述は発音辞書で調べて、自分の発音がきちんとしているか確認できましたが今ではオンラインで、しかも無料でチェックできます。それがCambridge Dictionaries Onlineです。

    特に優れているのは、IPAとともに音声ファイルも用意されていて、IPAについての知識が無くてもわりと楽に発音を確認できることです。確認ついでにIPAに慣れていくと後々有益なので、ついでにIPAの記述がどうなっていて、どういった記号ならどういった音かを常に確認したほうが良いでしょう。

    アメリカ英語とイギリス英語の両方に対応しているというのもすばらしいですね。紙の発音辞書より優れている点は検索機能で、発音チェックの速度が向上し、結果的に発音改善にかかる時間も減ります。

    紙の発音辞書も好きですし、特に最近のものはCDの中に辞書ソフトがついているのでオフラインでも使える発音辞書として非常に魅力的ですが、こちらのケンブリッジのオンライン辞書は無料でこのクオリティです。

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    英語はアクセントに発音が支配されているといっても過言ではなく、アクセントをネイティヴと同様に発音できるかどうかで伝わりやすさが変わります。アクセントがある箇所は母音の発音が無い箇所とは異なりますし、アクセントの強度のありかたも英語と日本語で異なります。

    かなり意見が分かれることで、未だにこれだという答えが無い難しい話題ですが、単純にいうと日本語のアクセントは高く発音され、英語のアクセントは強く、長く、母音が無アクセントのシラブルとは違ったものになります。細かく言っていくと、例外も多いですし、日本語のアクセントを私たち母語話者は強く感じる傾向にありますし、この変に関してはとても難しいです。

    こういった難しいことに挑戦し続けたのが杉藤先生です。杉藤 美代子先生は精力的に研究をされた方で、疑問があればそれを証明するための実験を行い、どういった結果が得られたかをわかりやすく報告されています。

    色々な人がネイティヴのように、ペラペラな英語を習得したいと思うでしょうが、そのペラペラというものは実に複雑です。単語の使い方も自然である必要がありますし、冠詞といった日本人にはとても難しい問題があります。仮に原稿を英語で音読するとして、その発音だけに関してもペラペラになるには色々と乗り越えるべき壁があり、その一つがアクセントです。

    母音や子音に関しては本が多くあり、尚且つそれらの研究は完成されていてただ覚えればいいだけです。一方でアクセントについて書かれた本は少ないですし、研究者の間でも実際に強さやピッチの高さはどうなのかいまでも意見がわかれますし、それが物理的なものか心理的なものかもまだきちんと証明されていません。そういったなかでこういった本が出版されたというのは大きな一歩ですし、色々な方に読んで欲しいと思います。

    研究論文のような文体に感じられるかもしれませんが、読みやすいほうなので、おそらくは言語学の知識が無い方でも読めるはずです。



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    私の父も言語学者ですが父も愛用した一冊です。家には入門用から上級用まで、私が購入したもの、父のもの兄のもの、と何冊もこのアメリカ口語教本があります。

    英会話で使える上品な例文が多く掲載されていて、色々な場面で実際に使える例文が書かれています。改訂前のものはなにせ古い本ですし、口語というのは時代とともに特に変わりやすいので、上品すぎるもしくは古い表現がありました。今のネイティヴ話者が聞いたら多少違和感を覚えてしまうような文が、少しですが、紛れていました。

    この改訂版は実はそこまで良い改訂ではなく、新しい文章も良くない、誤字がある、付属CDの朗読が遅い、などなど色々な問題を抱えています。幸いこの入門用はそこまで改訂の必要も、難しさも無かったのか十分使える内容です。

    クラーク氏は既に亡くなっていますし、本人無しの改訂は難しいのでしょうが、良い改訂をまたすればかつての栄華を取り戻せるでしょう。

    英語の本は数多くありますが、生活の様々な場面で本当に使える表現のみを大量に掲載したような本は今現在もこの本以外には知りません。英作文や試験で使える表現集では素晴らしいものがあるのですが、日常生活での会話となると会話内容もまばらで焦点を絞りづらいのでなかなか良い本は生まれないのでしょう。

    口語表現集の出版状況をみるとなんとも歯がゆいのですが、今後も注目して口語表現の本は購入して名著を探していきたいです。

    リンクを張っておきますが、改訂前のものを中古で購入するのも良いでしょう。

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    川端 淳司さんのこの『TOEFL TEST対策iBTスピーキング』は日本で書かれたTOEFL関連の書籍のなかでも数少ない良書です。残念ながら多くの参考書はTOEFLの試験形式を把握せずに書かれたような、実際の試験とは遠く離れた内容になっていますが、この本はお勧めできます。

    この本は練習量や実際の試験への類似性の面でとても優れています。この本だけで模擬試験ができて、時間配分など色々なことになれる事ができるのでお勧めです。

    スピーキングの解答はQ1からQ6までやっても一時間かからないので、リスニングやリーディングの点数がある程度あがったらシャドーイングなどのリスニング・リーディング対策を減らして、毎日必ずスピーキングとライティングをやることをお勧めします。実際に時間を計って、制限時間どおりにこなし、自分の声や文章を保存して見直しをすると尚良いです、たまにでも。

    TOEFLのライティングとスピーキングではリスニング能力も非常に重要ですが、これらになれるためにもシャドーイングの際はライティングとスピーキングの練習問題の音声ファイルも行う事が非常に有効です


    リスニングで安定して20点後半がとれるようになったころでも、スピーキングとライティングの音声が完璧に聞き取れず、書くべきこと話すべきことが少し足りなかったことがよくありました。スピーキング試験とライティング試験の間に聞く音声ファイルは難しいのです。

    理由としては重要な情報が一瞬しか語られないことにあります。リスニング問題のときはある一つのことについて色々と説明がされ、話の前後関係が理解を促すのですが、スピーキングやライティングでは前後関係が助けにならない事が多いです。

    なのでこういった、一つの物事について一度しか語らない、というリスニングに慣れるために、そしてシャドーイングの量を増やす為に、お勧め参考書のスピーキングとライティング問題のなかの音声ファイルもシャドーイングすることを強くお勧めします。

    模範解答は本当に模範というか、ネイティヴそのものの解答ですが、ここまでできなくても高校の英語の教科書にある例文のような内容でTOEFLのスピーキングで23点は確実にとれるので模範解答を目指す必要はないでしょう。

    ちなみにこの「TOEFL TEST対策iBT」シリーズはスピーキング以外にもリーディング、リスニング、ライティング、単語など色々ありますが、スピーキング以外はお勧めしません。最近新たに違うバージョンのライティングの本を出したようですがその本はチェックしていませんが。その本とこのスピーキング対策の本以外は、あまりにも実際のTOEFLiBTの出題とかけ離れていて、洋書のDELTAなどのほうが有効です。

    例えばリスニングの本は、読み上げる速度も速いですし、実際の試験のリスニングの音声ファイルと比べて長すぎたり、固執して年号や金額ばかり羅列したり、傾向が違います。リスニングの問題でお金や年号などの数字を扱うのはよくあることですが、TOEFLでは軽く言及される程度です。


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